【アメリカ映画】ダニエルズ『スイス・アーミー・マン』レビュー

無人島で助けを求める孤独な青年ハンク。
いくら待てども助けが来ず、
絶望の淵で自ら命を絶とうとした
まさにその時、
波打ち際に男の死体が流れ着く。
ハンクは、その死体からガスが出ており、
浮力を持っていることに気付く。
まさかと思ったが、
その力は次第に強まり、
死体が勢いよく沖へと動きだす。
ハンクは意を決し、
その死体にまたがると
ジェットスキーのように発進!

様々な便利機能を持つ
死体の名前はメニー。
苦境の中、
死んだような人生を送ってきた
ハンクに対し、
メニーは自分の記憶を失くし、
生きる喜びを知らない。

「生きること」に欠けた者同士、
力を合わせることを約束する。
果たして2人は無事に、
大切な人がいる故郷へ
帰ることができるのか──! ?

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「スイス・アーミー・マン」 作品情報

作品名

スイス・アーミー・マン

監督

ダニエルズ
(ダニエル・シャイナート、ダニエル・クワン)

主演

ダニエル・ラドクリフ
ポール・ダノ

配給

ポニーキャニオン

あらすじ

無人島で助けを求める孤独な青年・ハンク。いくら待てども助けが来ず、自ら命を絶とうとしたその時、男の死体が流れ着く。さまざまな便利機能を持つその死体・メニーは記憶を失くし、生きる喜びを知らない。ハンクとメニーは力を合わせることを約束し…。

「スイス・アーミー・マン」 作品の雰囲気

コミカル←|●|―|―|―|―|→シリアス  
演技重視←|●|―|―|―|―|→見目重視
台詞重視←|―|―|―|●|―|→画図重視
けんぜん←|―|●|―|―|―|→えちえち
さわやか←|―|―|●|―|―|→じめじめ
現実主義←|―|―|―|●|―|→非現実的
特殊設定←|●|―|―|―|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|●|―|―|→受の良さ

「スイス・アーミー・マン」 攻めキャラ情報

メニー
 #黒髪 #中背 #細身 #ゾンビ #無知 #正直 #豪胆 #恋愛体質

「愛がほしくて帰りたいのか? でも愛されず逃げ出した 君は壊れてて空で汚くて役に立たない ゴミ同然だ」
「ハンク 僕のオッパイの様子が変だ」
「コルクを尻に入れたろ セックスか?」
「僕もそうすれば 君は変人じゃなくなる 君の力に」
「愛が僕を生き返らせてくれる」
「ハンク 僕は恐怖を感じてる 本当に怖い 死んだら君に会えなくなる」
「人はみんな醜いのかも 1人が“それでも平気だ”といえば みんな歌って踊りオナラをする 寂しくなくなるさ」

出典:ダニエルズ『スイス・アーミー・マン』(ポニーキャニオン、20年)

「スイス・アーミー・マン」 受けキャラ情報

ハンク
 #茶髪 #長身 #筋肉質 #ヒゲ #臆病 #神経質 #ネガティブ #内気

「どうかしてる 正気とは思えない 1人ならもしかして助かるかもしれないのに」
「君が必要なんだ 最高のコンパスだから」
「俺が 美しい? まさか 本当に?」
「孤独なんだ でももう孤独じゃない 君が話しかけるから」
「俺なんか相手にされない」
「サラのことは忘れろ 君には俺がいる」
「みんなの排泄物と混ざるのは 歓迎だ 君の排泄物と僕のが いずれ再会できるから 楽しみができるだろ」
「許して 君は楽しそうで 僕は孤独だったから」

出典:作者『タイトル』(版元、刊行年)

「スイス・アーミー・マン」 攻めと受けの対比

年齢:攻?受
身長:攻<受
体格:攻<受
階級:攻?受
立場:攻>受

「スイス・アーミー・マン」 起承転結ネタバレ

ここから先はネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。

起:ハンクと死体の出会い

無人島に取り残された一人の男・ハンク(受)。助けを待っていたが誰も来ず、絶望している。縄に首をかけようとしたその時、一人の男(攻)が流れつく。自分以外の人間に興奮したハンクは近寄るが、男は既に死んでいた。男の体内に溜まったガスが尻から放出され、「馬鹿馬鹿しさ」と「自分も死ぬとこうなる」が重なり、死ぬことを止めたハンク。すると、男のガスをジェットにして海を渡ることができるのではないか、と気がつく。オナラジェットスキーで沖まで出るが、転覆。奇跡的に大陸に辿り着くも、人のいない、山奥にある海岸だった。第2のサバイバル生活が始まる。

承:突然話し出した死体の名はメニー

ある夜、急に喋り始めた死体の男。身体は依然として動かず、頭も据わらないが、会話はできる。しかし、道徳観念もなければ、一般知識もなく、記憶喪失の状態だった。ハンクは彼を「メニー」と名づけ、様々なことを教えた。グラビア雑誌を見せながら女について話していたところ、メニーが勃起。ハンクはあることに気づく。メニーの勃起はコンパスの役割をしているのだ。ハンクはメニーの前にグラビア雑誌をぶら下げ、故郷を目指し始める。

転:メニーの勃起不全

メニーが勃起しなくなる。長時間の酷使と、同じグラビア雑誌しか見ていなかったからだ。そんなとき、不意にハンクのスマートフォンがポケットから滑り落ち、メニーの眼前で起動。待ち受けにしていた女性にメニーはフル勃起。しかし充電が残り少なく、ハンクが女装することに。こんな見た目では勃起しないと思っていたが、メニーは「美しい」と気に入った。そうして、なんとか途中まで来たが、危険な橋を渡って川を越えなければ人里に辿りつかない。思い切って橋を渡ろうとするも、壊れて川に飲み込まれる。もう浮き上がれない──諦めたとき、メニーの尻からガスが出て急浮上。

結:人里に辿り着いたハンクとメニーは…

車が見えるところまで来た。ハンクは今まで隠していた“秘密”をメニーへ語る。…しかし、その背後に突如クマが出現! メニーのガスと火で応戦しようとするハンクだったが、真実を知ってしまったメニーは、ショックのあまり能力が発揮できない。クマに引きずられてゆくハンクを眺めていたメニーだったが、ハンクのために初めて四肢を動かし、クマを撃退。翌朝、メニーはハンクを背負って一軒の民家へ。二人はようやく危機を脱出した。しかし、メニーは動きも話しもしない死体に戻ってしまい──!?

続 き は 本 編 で !!

「スイス・アーミー・マン」 おすすめポイント

万人にオススメしたい作品
って内容じゃないんですけど、
私はこの作品、すっごく好きでして……。

上の起承転結、
何言ってるか分からないですよね。
でも本当、こうなんです。

作品のラスト、
女性の「何なの…(What The Fxxx)」
というセリフで終わるのですが、
観客の感想と完全一致なんですよね。

最初はくだらなさ、
下品さにゲラゲラ笑っているのに、
最後には伝えたいメッセージが
ちゃんと伝わってきて、
なんともいえない、
不思議な魅力のある作品です。

また、映像美もすばらしくて。
女装したハンクがバスに乗ってくるシーンとか、
ポップコーンがはじけるシーンとか、
水中でのキスシーンとか、
「スローモーション」の使い方が上手。

数十秒前まで
オナラとか勃起とか言ってたのに、
卑怯なくらい美しいです。
わぁ〜…って見惚れちゃう。

内容も意外と深いのです。
上にあるメニーのセリフ引用でも
使ったセリフ、
「人はみんな醜いのかも
 1人が“それでも平気だ”といえば
 寂しくなくなるさ」
これを軸にした作品なのですが、
こんなにもコミカルで独創的な物語にして
メッセージを発信できるの、
天才としか言いようがない。

しかも死体役、あのダニエル・ラドクリフさん
(ハリーポッターのハリー役の人です)。
尻毛までよく写したと思う。

ハッピークソライフ」が好きで
(下品なネタをゲラゲラ笑えて)、
「柳下荘〜」の死体の見た目が大丈夫でしたら、
ぜひ一度観てください。

「スイス・アーミー・マン」 予告映像と本編の視聴はこちら

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