【韓国映画】パン・ウンジン『メソッド』感想レビュー

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「メソッド」 あらすじ

舞台『アンチェイン』で
同性愛者の役を演じることになった
ジェハとヨンウ。

アイドルであるヨンウは、
練習初日から遅刻し、
台本すらめくろうとしない。

全くやる気がないヨンウに、
先輩である舞台俳優ジェハは
苛立ちを隠せないでいた。

台本読みをふざけているヨンウに
キレたジェハは、
突如彼に詰め寄り渾身の演技をする。
すると、今まで全く無反応だった
ヨンウの目から涙が…。

その日を境にヨンウは、
演技に関することを
ジェハに聞いたり習ったりと
急に積極的になる。

やがて2人は
劇中に使用する小道具を買いに、
町まで出かけるほどの仲になる。

ある日、稽古中、癇癪をおこし
舞台から飛び出したヨンウを、
ジェハは彼の気が治まるまで
そっと待ち続けた。

そんなジェハの優しさに
心が熱くなるヨンウ。

それを機に、グッと距離が縮まった二人。
ヨンウをただの後輩として
可愛がっていたジェハだったが、
演技からではなく、
彼を愛おしく思う気持ちが
芽生えていたことに気づき、驚く。

今まで同性に抱いたことがなかった
新たな感情に戸惑い、
イライラするジェハだったが…。

「メソッド」 作品情報

作品名

メソッド

監督

パン・ウンジン
(『マルティニークからの祈り』)

脚本

パン・ウンジン
ミン・イェジ

主演

パク・ソンウン
オ・スンフン
ユン・スンア

配給

アットナイン・フィルム

「メソッド」 作品の雰囲気

コミカル←|―|―|―|―|●|→シリアス  
演技重視←|―|―|●|―|―|→見目重視
台詞重視←|―|●|―|―|―|→画図重視
けんぜん←|●|―|―|―|―|→えちえち
さわやか←|―|―|―|●|―|→じめじめ
現実主義←|―|―|●|―|―|→非現実的
特殊設定←|―|●|―|―|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|―|―|●|→受の良さ

「メソッド」 登場人物まとめ

ジェハ

#黒髪 #長身 #ガチムチ #ベテラン俳優 #妻帯者 #ストイック #真面目 #衝動的

「劇中の沈黙は観客に緊張感を与えるが それも長くは続かない だから火花を散らす演技で 観客を魅了するんだ」
「褒められたからって図に乗るな 役を演じ切るには時間がかかる」
「それが俺に抱かれたがってる男の動きか?」
「何でもよく知ってるんだな」
「あの写真は演技に没頭した結果です メソッド俳優ですから」

出典:パン・ウンジン『メソッド』(アットナイン・フィルム、2017年)

ヨンウ

#黒髪 #中背 #細身 #ピアス #売れっ子アイドル #バイク #やんちゃ #生意気 #努力家

「明日はきっと愛せます」
「僕は楽しんでやってるのに脇から命令ばかりする」
「裸で撮りましょう それが2人の役柄にふさわしいから」
「セリフを忘れた? “会いたかった”ですよ」
「愛を公表したくて僕がマスコミに伝えました 僕を愛してますよね?」
「僕は完璧に演じたし あなたもウォルターそのものだった」

出典:パン・ウンジン『メソッド』(アットナイン・フィルム、2017年)

「メソッド」 キャラクター比較

年齢:ジェハ > ヨンウ
身長:ジェハ > ヨンウ
体格:ジェハ > ヨンウ
階級:ジェハ = ヨンウ
立場:ジェハ > ヨンウ

「メソッド」 起承転結ネタバレ

舞台『アンチェイン』でダブル主演に抜擢されたジェハ(攻)とヨンウ(受)。舞台の内容は、敵に監禁された2人の男が、次第に愛し合う…という同性愛の物語だった。ベテランの実力派俳優であるジェハは、やる気のない新人アイドル・ヨンウに対しフラストレーションが溜まっている。毎回の遅刻や、セリフの修正をメモしないこと、読み合わせ中にSNS投稿用の写真を撮ることなど、日々の怒りがつのる。数回目の練習中、気だるげに台本を読むヨンウに対し、100%の芝居をするジェハ。その日から、ヨンウは変わり始める。

芝居の楽しさに目覚めたヨンウは、演技の勉強を開始。その中で、「メソッド演技法」を知る。作中のシーンに近い実体験をすることで、より自然かつリアルに演じられる、というものだ。他にも、書籍を読みあさったり、小道具の買い物へついて行ったり、役を理解して少しセリフを変えたりなど、芝居に対して前向きな姿勢を取るようになった。そんなヨンウに、ジェハは親しみを感じる。ついにはジェハの自宅で食事をするほどの仲に。食卓にはジェハの美しい妻も同席していた。

本気の芝居を重ねるうちに、互いに惹かれ合ってゆくジェハとヨンウ。やがて妻よりヨンウを優先してしまったジェハは、彼を連れて雲隠れする。急に行方不明となったヨンウを心配するマネージャーたちだったが、ヨンウは無邪気にもインスタグラムにジェハとのツーショットを掲載していた。ほどなく見つかるが、『アンチェイン』の制作発表会は異様な雰囲気に包まれる。ヨンウは交際を公にすることを望んだが、好奇の目に晒されたジェハは「自分はメソッド俳優で、あくまで演技だった」と語った。

『アンチェイン』公演初日。時間ギリギリになっても現れないヨンウ。開幕直前に楽屋入りした彼は、傷を負っていた。互いに複雑な感情を抱いたまま、幕が上がる。ヨンウは劇中のセリフを変え、ジェハの妻を殺害したことを匂わせるが──

続 き は 本 編 で!
(エンディングの種類:オープンエンド)

「メソッド」 感想

キーワードは冒頭にある

「嘘をつく時も俺は真実を言う──アル・パチーノ

この作品、BLとして観た場合と、
ミステリとして観た場合で
結論と感想の書き方が変わりますね。

BLとして観た場合は、
「不倫だと分かっていて愛し合った2人。
 最終的には自分を捨てたジェハを恨みつつ、
 彼は妻と共にあるべきだと考えたヨンウ。
 すべては演技だったことにして、身を引いた」
という結論(ヨンウ=健気受説)。

ミステリとして観た場合は、
「メソッド演技法を取り入れたいと思ったヨンウ。
 舞台の内容と同じく、『最初は嫌い合っていた2人』から始め、
 自分を好きになるように仕向け、恋仲に。
 すべては良い舞台を作るための演技だった」
という結論(ヨンウ=サイコ受説)。

間を取ると
「メソッド演技法を取り入れようと
 ジェハを騙したヨンウだったが、
 本気で恋をしてしまった」
という結論(ヨンウ=ほだされ受説)。

ジェハのキャスティングは
ヨンウ側からしていた、
ということが終盤(00:59:04)で
明らかになるので、
最初から手の内だった説があるんですよね。
ジェハが制作発表会のときに
マスコミに向かって
「メソッド俳優ですから」(00:55:11)と
言っているので、
おそらくメソッド俳優として有名な俳優。
それを踏まえた上でのキャスティング。
また、ジェハ側のプライベートは
作中で多く描かれているのに対し、
ヨンウ側のプライベートは
ほぼ描かれていないのもポイントです。
(ヨンウが完全に1人のシーンはなく、
 必ずマネージャーかジェハ、監督などがいる。
 最後だけ、誰もいない車で思案顔)

あえて同性愛者にしたのは、
そちら側に視聴者側を集中させて
ミスリードさせるため、
という風にも受け取れました。

これが男女だと「どんでん返しのミステリ」になる感じ。
百合だとしても「どんでん返しのミステリ」になるかな。
誤解を恐れずにいうと、舞台や映画、古典文学では
女=狡猾、というオチの作品が多いので…。

ミステリという1ジャンルだけに収めたくないから、
あえてBLにしたんだろうなーと思いました。
見る人によってミステリかラブストーリーか変わる。

BLとして観た場合も、
ミステリとして観た場合も、
どちらにしても
「嘘の中にある真実」は
「愛」なんですが、
騙そうと思ったのに愛してしまったのか、
ただ純粋に愛してしまったのか、
という違いは大きいですよねー。

日本語の翻訳者および宣伝は
「同性愛に目覚めた」や
「BL(ボーイズラブ)」と
謳っていて、
キャッチコピーもその路線なのですが、
韓国ではどうだったんだろうなぁ…
と気になった作品でした。

あと、映画の中で
「ゴドーを待ちながら」の話が
登場するんですが(00:16:32)、
『アンチェイン』は
オマージュした部分がありますね。
基本は2人劇で、
縄で首をくくっている登場人物。
最後は自殺の失敗で終わり、
幕が降りるところとか。

ちなみに劇中劇『アンチェイン』は、
韓国で公演されたそうです。
映画だけでは少し内容が
分かりにくかったので、
それを観ると
また新たな視点が生まれそうですね。

「メソッド」 予告映像(トレーラー)