鳥と話せる【BLマンガ感想】山本小鉄子『とりたん』レビュー

イケメンエリート高校生
×
鳥と話せる「なんでも屋

作品名
とりたん
作者名
山本小鉄子
レーベル
バーズコミックス ルチルコレクション

探偵という名のなんでも屋として奮闘する犬崎は、子供のころから、「鳥の言葉」がわかるというあまりうれしくない能力を持っている。そんなある日、カラスに話しかけられ、会話を交わす犬崎。そのカラスはなぜか犬崎の名前を知っていた。「好きに呼べ」と言われ「クロ」と呼ぶことにしたカラスが気にかかる犬崎は、大家さんの息子で高校生の充の声をクロと間違えてしまう。カラス界のイケメン(?)クロに次第に惹かれる犬崎は!? 

スポンサーリンク

作品の雰囲気

コミカル←|―|●|―|―|―|→シリアス
物語重視←|―|―|●|―|―|→人物重視
台詞重視←|―|―|●|―|―|→表情重視
けんぜん←|―|●|―|―|―|→えちえち
さわやか←|●|―|―|―|―|→じめじめ
現実主義←|―|―|―|●|―|→非現実的
特殊設定←|●|―|―|―|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|●|―|―|→受の良さ

攻め情報

黒木 
 #黒髪 #長身 #細身 #18歳 #高校生 #親離婚 #寡黙 #天然 #真面目 #健気 #気づかい

「まだ一度も人を好きになったことなくて」(1巻71ページ)
「部屋明るいと犬崎さん休めないかなと思って」(1巻116ページ)
「じいちゃん ありがと」(1巻162ページ)
「さっきの男は誰です? その男のマンションから出てきましたよね?」(2巻23ページ)
「俺 こーゆうの初めてだからよく分かんなくて でも 昨日あの男と一緒にいるの見たとき すげーイラッときたから あんまり仲良くしないでね」(2巻48ページ)
「犬崎さんは 俺に肯定してほしいんじゃないの?」(2巻112ページ)

出典:山本小鉄子『とりたん』(幻冬舎、2018-2019年)

受け情報

犬崎 望
 #茶髪 #中背 #細身 #鳥と話せる #23歳 #探偵 #明るい #お人好し #面倒見がいい

「俺は猫派! 犬崎だけどだんぜん猫派」(1巻16ページ)
「実は昨日…失恋した相手に会えた でもさ なんかもー 気持ちはフッきれてた」(1巻144ページ)
「頭もyくてまあまあイケメンでタッパもあって動物好きで市長の孫で優しくてモテる18歳 俺なんかになびくわけねえ」(1巻182ページ)
「よかったらなんだけど 次の土曜デートしない? あ でも受験生だしまずいかあ」(2巻76ページ)
「黒ジャケと黒ズボンは仕事着だから 昔見たドラマの探偵が黒で決めててカッコよかったから…」(2巻83ページ)
「先に惚れたのこっちだし 心配せずともメロメロですよ」(2巻157ページ)

出典:山本小鉄子『とりたん』(幻冬舎、2018-2019年)

攻めと受けの比較

年齢:攻<受
身長:攻>受
体格:攻=受
階級:攻>受
立場:攻=受

この作品を読む

あらすじ

鳥と話せる特殊能力を
持つ犬崎(受)は、
探偵として働いている。

しかし、鳥と話せることは
秘密にしている。

そのため、探偵といっても、
地元の人からは
「何でも屋さん」
のように扱われており、
犬の散歩などが
主な依頼となっている。

ある日、犬崎が公園で
休憩をしていると、
カラスがやってきた。
話しかけると、
少し驚かれるも、
会話に応じてくれた。

犬崎が鳥に声をかけても
「人間が話しかけてきた」
「気持ち悪い」「怖い」
と逃げられてしまうことが
多く、新鮮味を覚える。

それからカラスとは
1ヶ月に1度ほどの
間隔で会うようになり、
犬崎は彼を「クロ」と
名づけた。

クロの優しさに惹かれ、
やがてクロの姿を
探し求めるようになる犬崎。
しかし、野生のカラスと
約束などできるはずもなく、
日々は過ぎてゆく。

数日後、待ちわびた声が
後ろから聞こえてきた
犬崎が振り向くと──

クロ!

あ うん…

確かにクロですけど

大家さんの息子、
「黒」木充(攻)が立っていた。
あまりに声がそっくりで
間違えてしまったのだ。

そして、クロでは
なかったことに
思いの外ガッカリしている
自分に気づいた犬崎は、
不毛な恋に頭を悩ませる。

この作品を読む

犬崎の恋心に気づいたクロは、
「俺が好きなのか?」
と問い、顔を覗き込む。
そのときの犬崎の表情で
確信したクロだったが、
戸惑ってしまう。

クロを困らせてしまい
焦った犬崎は、
ただの勘違いということに
して、クロを外へ帰す。

直後、
失恋のショックで
やけ酒をして、
二日酔いで潰れる。

心配した黒木が
来訪し、看病や
掃除をしてくれた。

数日後、犬崎は
クロに呼び止められる。
もう二度と会うことは
ないと思っていたが、
意外と普通に
会話ができる関係に。

そのことを黒木へ
伝え、もう大丈夫だと
笑顔を見せた。

あんなにヘコん

でたのに?

なぁ

だからもう

大丈夫だし

気ィかけて

くれてサンキュ

犬崎自身、
立ち直りの早さに
驚いていたが、
それは黒木のおかげだと
感じていた。

ふとしたキッカケで、
犬崎は黒木に抱いている
気持ちが、かつてクロへ
向けていたものと
同じことを自覚する。

とはいえ、
クロに未練があって
似ている部分のある
黒木を好きなのか、
純粋に恋をしたのか
分からずモヤモヤ……。

ある夜、
犬崎が気を抜いた隙に
キスをした黒木。
驚いて固まる犬崎を残し、
何も言わずに去ってゆく。

翌日、キスの理由を
聞いたが、
はぐらかされてしまう。

俺は 

理由が知りたいだけ

知ったら

犬崎さん

怒るよ

何かを隠しているような
素振りが気になり──

続きはコミックスで!

この作品を読む

感想

安定の山本小鉄子先生!
あまくてハッピーなBLが
読みたくなったときの
駆け込み寺のような存在

ありがたい。

少し前にTwitterで
「商業BLはどっちが
 攻め/受けか
 分からないからイヤ」
って話題がありましたが、
そういう方の入門編として
山本小鉄子先生はオススメ。
ほぼ黒髪長身攻め/茶〜金髪小柄受け
なので、安定しています。
たまにイレギュラーもありますが、
表情がオーソドックスな
「攻め」や「受け」なので
パッと見の印象で分かります。
表情の描き分けがすごい。

とても多くの名著を出されていて、
その中でも、ルチルで描くときは
挑戦的なものが多いですね。
ファンタジー要素だったり、
女装子だったり。
本作も「鳥と話せる主人公」。

鳥たちの反応や言葉が
リアルでおもしろいです。
たしかに、人間から急に
鳥語で話しかけられたら
「は!? 意味わからん」
ってなりそう。
他のファンタジーものだと
「俺の言ってることが
 分かるのか!嬉しい!」
とすぐに受け入れられがちですが
この作品の鳥たちは
そんなに甘くないのです。
また、野鳥園にいる鳥たちは
基本的に「だるい」ばっかり
言ってる。不真面目かわいい。

ジャッキーの尻も
かわいいです。
動物の尻はかわいい。

そして黒木、
物語の終盤で髪型を変えて
短髪になるんですが
(前髪が眉下から眉上に)
これがまた顔がいいんですよ。
作中で髪型変えるの、
実は好きなんです……。
黒木に関しては髪切った
後のほうがより格好いいので
さらにテンション上がる。

完結済みで2冊だけなので、
まとめ買いもしやすいです。
癒されるBL、ハッピーなBLが
読みたい方へオススメ!

最後に、どうでもいい小噺ですが
「とりたん」で検索すると
一番上に鳥取短大が出てきます。
た、たしかに「とりたん」!笑

この作品を読む

今月のイチオシ作品

らくたしょうこ
『レンタルタマちゃん』

日々寄せられる住民の不満に疲弊する町役場の役人・矢澤は、癒やしを求めて「ねこレンタル」を利用することにした。
サービスに来たのは猫耳しっぽをつけた人間の“タマ”だった。
人間とわかっているのに、タマと過ごす時間は矢澤にとってかけがえのないものになっていく。
なぜ傷だらけの身体で、なぜこの仕事をしているのか?
本当のタマのことは何も知らなくて……