傷心おひとよし公務員×やっかい性癖ゆるふわ男子
5年間の恋が、一瞬で終わった。断ち切れない想いを胸に抱えたまま、思い出の公園でひとりぼんやりとしていた夏朗に声をかけてきたのは、別れたばかりの恋人にどこか似ている男・梅雨彦だった。
かわいそうなのを放っておけないと半ば強引に連れ帰られ多くの言葉を交わさず、元彼を重ねて自分を抱けばいい、と梅雨彦に流される形で一時の快楽に溺れてしまう。
自分でも知らなかった一面を暴かれるようなセックスの後、再会の約束をして無邪気に微笑む梅雨彦に夏朗の中では何かが確実に変化していたが、彼はやっかいな性癖を抱えていて──。
上田アキ『オーバー・スコール』 傾向チャート
コミカル←|―|―|―|●|―|→シリアス
物語重視←|―|●|―|―|―|→人物重視
台詞重視←|―|●|―|―|―|→表情重視
けんぜん←|―|―|―|●|―|→えちえち
さわやか←|―|―|●|―|―|→じめじめ
現実主義←|―|●|―|―|―|→非現実的
特殊設定←|●|―|―|―|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|●|―|―|→受の良さ
上田アキ『オーバー・スコール』 登場人物紹介
攻めキャラクター
夏朗
#黒髪 #長身 #細身 #めがね #31歳 #公務員 #市役所 #温厚 #健気 #包容力 #真面目
相手のことを考えて一緒にいること それが…「付き合う」って関係じゃないかな
出典:上田アキ『オーバー・スコール』134ページ(竹書房、2020年)
僕はあの子があのまま生きていくのは放っておけない
出典:上田アキ『オーバー・スコール』185ページ(竹書房、2020年)
受けキャラクター
梅雨彦
#茶髪 #中背 #細身 #美人 #23歳 #大学生 #人間科学部 #長男 #姉他界 #こじらせ #ゆるふわ
梅雨彦くんはねー 大学生やってる人です
出典:上田アキ『オーバー・スコール』62ページ(竹書房、2020年)
付き合ってって言われて デートとかもしたけど すぐ振られてたよ 優しいけど 何考えてんだか分かんないとか言われてさ ひどいよね
出典:上田アキ『オーバー・スコール』132ページ(竹書房、2020年)
攻めと受けの比較
年齢:攻>受
身長:攻>受
体格:攻=受
階級:攻>受
立場:攻=受
上田アキ『オーバー・スコール』 あらすじ
起
5年間付き合った恋人に
振られ、途方に暮れる夏朗(攻)。
そんな彼に
声をかけてきたのは、
元恋人にどこか似ている
梅雨彦(受)という男だった。
「家でゆっくり話聞くよ」
そう言って梅雨彦は
自宅へと連れ込む。
部屋に入った直後、
話よりも先に
身体を重ねてしまう。
自分でさえ知らない一面を
暴き出すようなセックスは、
何かを語るよりも
すっきりとした
気持ちにさせた。
帰ろうとすると、外は雨。
梅雨彦は傘を差し出す。
今度返しに来てね
…うん
ありがと…
数日後。
傘を返しに行った日も、
雨が降っていた。
また傘を返しに来ることを
約束して、傘を借りる。
こうして二人は
頻繁に会うようになった。
承
身体から始まった関係だったが、
食事のみで楽しく過ごす日も
増えてきたころ、
夏朗は恋心を抱くようになった。
梅雨彦もそうだろうと
考えていた矢先、
事件は勃発する。
夏朗が梅雨彦の部屋を
訪れると、見知らぬ男と
身体を交えていたのだ。
部屋へ入ってきたことに
気づいた梅雨彦は
男を外に出そうとする。
その男は、
部屋を出てゆく際、
夏朗の耳元で
気になる言葉を
吐き捨てていった。
それを聞き、
夏朗は呆然と立ちすくす。
好きだったのは
僕だけだったんだね
へ?
オレ夏朗さんのこと
好きだよ?
…っていうか
今は夏朗さんが
一番好きだよ?
気まずそうな様子すらなく、
純粋な瞳を向けてくる梅雨彦に
いたたまれなくなった夏朗は
部屋を去り、
自ら連絡を断つ。
転
梅雨彦を忘れようと
訪れた公園で、
二人は再び巡り逢う。
思いのほか
今まで通りに
話しかけてくる梅雨彦に
戸惑う一方、
夏朗は覚悟を決めていた。
梅雨彦に向き合う覚悟だ。
彼が持つ歪んだ思想を
解してゆくために、
夏朗は梅雨彦を抱くことを止め、
そっと近くに寄りそう。
夏朗に手応えはなかったが、
梅雨彦には変化が起きていた。
一人だけ変わってゆく
梅雨彦を許せない男は、
夏朗の職場へやって来た。
危害を加えようと
していたことを知った
梅雨彦は、夏朗を
遠ざけようと画策する。
もう夏朗さんには
会いたくない
だからもう
連絡してこないでね
待って!
どうしたの
急にそんなこと…
何かありそうな言い方が
気になった夏朗は……
結末はコミックスで!
上田アキ『オーバー・スコール』 感想レビュー
尊い腕枕オブザイヤー。
最初の梅雨彦は“腕枕”という行為に対して、
「寝にくいのになんでこんなことするの?」
という疑問を抱いています。
それが徐々に
「あったかくて嬉しい」
へと変わってゆく。
思いやりとか温かさに気づいて、その心地よさを理解するようになる。
じんわり沁みてホロリときます。
エロ部分
梅雨彦が情愛を理解できていないこともあって、1〜6話までは切ないエロス。
夏朗は想いを届けたいけれど伝わらない。
ただ性欲で甘やかしただけと受け止められてしまうのが何とも寂しい。
そんな二人ですが、7話はひたすら甘くてイチャイチャ!
ちゃんと想いが伝わってから身体を重ねるので、読後感も含めて最高でした。
トラウマから救出して両思いになったら終わり、じゃないのが良かった〜。
クライマックスとエンディング
クライマックスのシーンは、完全な晴れではなくてお天気雨というニクい演出。
いろんなニュアンスを残していて素敵なんです。
豪(梅雨彦を歪ませた男)や洋春(夏朗の元カレ)との確執も、物語としては綺麗に解消されたけれど、まだ向き合わなきゃいけないことがある。
今後すれ違うことや噛み合わないことがあっても、その都度向き合う。
雨だけど晴れている、でもあり、晴れだけど雨が降っている、でもあり。
お天気雨っていうのがまさに合っていました。
二人の成長物語
この物語は梅雨彦を成長させるストーリーに見える一方、夏朗も成長していますね。
これまでの夏朗なら、振られても仕方ないと諦めて、追いかけずに終わる恋愛を繰り返すんだろうな、と感じさせる部分があります。
覚悟を決めて梅雨彦と向き合うことにして、ようやく求めるものを手に入れた夏朗。
梅雨彦がだいぶこじらせていたからこそ、そこまで行けたんでしょうね。
多少のこじらせ具合だと「自分以外の誰か」に任せちゃっていたと思うので、二人が出会えて本当に良かったね……! ってなります。
精神的に囚われた受けを優しく救い出す攻めという展開が萌える方にオススメです!