才能と愛憎【BL漫画感想】おげれつたなか『Daisy Jealousy』レビュー

一途に愛を捧げる天才型童貞 × 努力家な嫉妬型パンピー

作品名
Daisy Jealousy 
作者名
おげれつたなか
レーベル
ビーボーイコミックスDX 

専門時代、才能に嫉妬していた相手・要と 社会人になり再会した三咲。学生の頃、キスしてきた理由を聞きだしたところ、「キスなんて好きだから以外の理由はないだろ」と何やらお怒りのようで…?

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おげれつたなか『Daisy Jealousy』 作品の雰囲気

コミカル←|―|―|―|●|―|→シリアス
物語重視←|―|―|●|―|―|→人物重視
台詞重視←|―|―|●|―|―|→表情重視
けんぜん←|―|●|―|―|―|→えちえち
さわやか←|―|―|―|●|―|→じめじめ
現実主義←|●|―|―|―|―|→非現実的
特殊設定←|―|―|―|●|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|●|―|―|→受の良さ

おげれつたなか『Daisy Jealousy』 登場人物

攻めキャラクター

要 
#金髪 #長身 #筋肉質 #めがね #顔がいい #モデラー #一途 #不器用 #努力家 #天才 #コミュ障 #汚部屋 #童貞 #衝動的

「……誰かに聞く前に ちゃんと自分で調べたら?」(16ページ)
「あー…えと ここ……ここ! うまい」(22ページ)
「どっ……どど童貞じゃない」(87ページ)
「三咲が見ててくれたら頑張れるから」(143ページ)
「罰が下ったんだきっと 俺が、欲深かったからだ」(166ページ)

出典:おげれつたなか『Daisy Jealousy』(リブレ、2020年)

受けキャラクター

三咲 一馬
#茶髪 #中背 #細身 #めがね #地味 #モデラー #コンビニ #努力家 #卑屈 #自己否定 #等身大 #鈍感 

「俺はこんくらいやんないと」(33ページ)
「でもまさかあの要が……フフッ いやいや俺は童貞ではないから要に勝ったとかは思ってないぞ…フフ……」(69ページ)
「俺 要に好きになって貰えるところなんか無いのに」(85ページ)
「お前といると一緒にいればいるほど悔しい そんなふうに思いたくないのに」(158ページ)
「お前に追いつけなくても 好きなこと もう絶対やめない」(198ページ)

出典:おげれつたなか『Daisy Jealousy』(リブレ、2020年)

攻めと受けの比較

年齢:攻 = 受
身長:攻 > 受
体格:攻 > 受
階級:攻 > 受
立場:攻 = 受

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あらすじ

3Dモデリングの
専門学校に通う
三咲(受)と要(攻)。

要は全校生徒中、
実力が頭ひとつ
飛び抜けている。

ある日、そんな彼を
逆恨みした生徒たちが、
要の課題データを消去する。

提出期限までに
間に合いそうもなく、
諦めかけていたところ、
手伝いを申し出たのが三咲だった。

データが消されたことを
自分以上に悔しがる三咲に、
要は心を動かされる。

課題をなんとか完成させた二人は、
打ち上げとして焼き鳥屋へ向かう。
マイナーなアニメの話題で盛り上がり、
要はさらに惹かれてゆく。

三咲

俺さ

うまい焼き鳥屋

他にも知ってん

だよね

……へぇ…? 

そうなんだ

…………

鈍感な三咲は意図に気づかず
スルーしようとするが、
周囲が手助けをして
二回目の焼き鳥屋へ。

仲がよくなればなるほど、
三咲は要の実力を知り、
自分との差に愕然とする。

入学前から
独学で勉強していた三咲は、
要に次いで成績優秀だった。
しかし、一位と二位の間には
大きな壁が存在していた。

自分では時間のかかる作業を
短時間で終え、
自分が入社したい企業から
スカウトされる要。
焦る三咲の目元には
クマが浮かんでいた。

痛々しい姿を見た要は
親切心で助けようとするが、
三咲のプライドが打ち砕かれ、
絶縁状態に……。

険悪な雰囲気のまま
訪れた卒業式の日。

思いが昂った要は、
三咲に口づける。

しかし想いは届かず、
二人の距離が
余計に広がってしまう。

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4年後。

三咲はCGアニメーション会社で
働いていた。
好きなモデリングの業務は
なかなか回ってこなかったが、
ついに手掛けられるチャンスが到来。

期待に胸を膨らませていると、
フリーモデラーとして活躍中の
要に外注することになった。

突然の再会への驚きと、
チャンスが消えてしまったショックで
複雑な感情を抱く三咲。

プロジェクトが終わり、
チームで打ち上げに。
泥酔した三咲を介抱していると
思いがけない言葉を聞き、
喜びのあまりキスをする。

俺のこと 

好きって 

今も?

……今も好きだ

翌日。

プロジェクトの続編が決まり、
要との共同作業も延長に。
酒で酔ってしまい
何も覚えていないことにして
業務を遂行しようと励む。

気まずさよりも
モデリングへの興味が
勝った三咲は、
要の自宅へと訪れる。

精密で興味深い制作物に
目を輝かせる三咲。

要は二人だけの
共同制作を持ちかけた。
三咲はすぐに受け入れ、
一緒に作り始める。

時には三咲の家に
泊まることもあったが、
要はキス以上のことは
してこなかった。

二ヶ月間その状態だったが、
要はついに三咲を誘った。

付き合っているのかも曖昧なまま、
繰り返し身体を交わせる二人。

その間にも、共同制作物は
着々と仕上がってきていた。

共同制作が出来上がってくるたび、
三咲は要との完成度を比較しては
落ち込むようになる。

比べすぎてはいけないと
分かっていても、
自分が活躍したい分野で
着々と実績を重ね、
有名になってゆく姿を
間近で見ることに耐えきれず、
三咲は「もう会わないでおこう」と
切り出し……。

結末はコミックスで!

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おげれつたなか『Daisy Jealousy』 感想

読後感が良い一冊。
「あぁ、読んで良かったなぁ(じんわり)」
というよりは
「よ゛か゛っ゛た゛ぁ゛(号泣)」

って感じの読後感の良さです。

3Dモデリングという
専門職な仕事内容、
そして男同士だからこその
嫉妬や焦りがリアルでしたね。

一般的な仕事だったら、
二人の能力は
おそらくトントンなんですよ。

要:クオリティは高く納品も早いけど、コミュ障。
三咲:クオリティもスピードもそこそこだけど、コミュ高。

でも物づくりの現場では、
前者のほうが「天才」で、
後者は「凡人」とされてしまう。

そこで生じる葛藤を
丁寧に描かれているので、
読んでいる側は
かなり感情移入してツラい。

作中ずっと苦しいわけじゃなくて、
時折まぜてくるギャグが
かなり面白いのも見どころ。

たとえば
初めて見る三咲のアヌスへの感想
「テクスチャ綺麗だな」
とか、吹き出してしまう。
妄想ではボヤ〜ッと
していたんでしょうね。

そんなギャグもはさみつつ、
ツラい葛藤の末、
三咲は最終的に
自分で自分を救い出します。

ソウルジェムの穢れを落とせるのは
自分自身しかいなかったんや……。
(分かる人にしか伝わらない
 ネタで恐縮です)

恋愛ものだと
相手が救うことが多いですが、
「好き」を取り戻せるのは
その人自身しかいないというか、
その人自身じゃないと意味がない。
そういったメッセージも素敵。

基本的に三咲視点なんですが、
要がつけていたブログは
公式サイトが再現しています。

こちら(2022年10月末に公開終了予定)

こういった仕掛け、
楽しくていいですねー!

物語単体でも
かなりリアリティがあるというか
設定が細かく作り込まれていて
(二人の家族、仕事内容、周囲の人物など)
もはやドキュメンタリーと言われても
納得してしまうような緻密さ
なんです。

そう思っているところに
このブログのURLが登場(巻末ページ)。
本を飛び出した世界にも
二人の息づかいが
聞こえてくる場所があると
「やはり実話なのでは?」
と思えて、楽しさが倍増しました。

没入感を味わえる
リアルなBLが好きな人に
かなりオススメです!

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