烏天狗の花魁【BL漫画感想】朔ヒロ『明烏夢恋唄』レビュー

本日のオススメ
朔ヒロ「明烏夢恋唄」
(comic marginal/双葉社/2020年)

会社員の暁人が豆腐小僧に連れられ、足を踏み入れた妖怪専用の遊郭。そこで出会ったのは、黒髪褐色の烏天狗・翠蓮という美しい男娼で――…。

【攻】不器用なリーマン
×
囚われの烏天狗【受】

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朔ヒロ『明烏夢恋唄』 作品の雰囲気

コミカル←|―|―|―|●|―|→シリアス
物語重視←|―|―|●|―|―|→人物重視
台詞重視←|―|―|●|―|―|→表情重視
けんぜん←|―|―|●|―|―|→えちえち
さわやか←|―|―|―|●|―|→じめじめ
現実主義←|―|―|―|●|―|→非現実的
特殊設定←|●|―|―|―|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|●|―|―|→受の良さ

朔ヒロ『明烏夢恋唄』 登場人物紹介

攻めキャラクター

金沢 暁人
 #茶髪 #長身 #細身 #会社員 #長男 #姉 #親と不仲 #お人好し #無鉄砲 #衝動的 #正直

「せっかくの立派な羽を隠しちまうのは勿体ねえよ きれいなのに」(29ページ)
「お前…大丈夫なのか…大口の顧客をおいて俺みてーな弱小企業に……」(61ページ)
「しょーがねえだろ 怒ってるところ無理にヤッたって楽しくねんだし…」(114ページ)
「夜中にすんません車貸してください! 会社もサボってすいません …どうしても だいじな人のためなんです」(179ページ)
「あー…親には勘当されてっから多分平気」(194ページ)

出典:朔ヒロ『明烏夢恋唄』(双葉社、2020年)

受けキャラクター

御岳山太郎坊 翠蓮
 #黒髪 #中背 #細身 #美人 #褐色肌 #烏天狗 #200歳 #男娼 #魔性 #健気 #ミステリアス #気品

「あんたみたいな良い男の隣で眠れるかなあ 落ち着かないな ふふっ」(38ページ)
「っな なにそれ …ずいぶん 自惚れた誘い文句だ」(70ページ)
「あんたに気に入られたかっただけかも 気に入られて おぼれさせて…俺のこと手放せなくなれば最高 ってね」(128ページ)
「(よろこんで もらいたいんだもん)」(199ページ)
「ほ…本気? おれは妖怪だよ? 昼は寝てるし 普段は人に見えないし 歳だって…」(210ページ)

出典:朔ヒロ『明烏夢恋唄』(双葉社、2020年)

攻めと受けの比較

年齢:攻 < 受
身長:攻 > 受
体格:攻 = 受
階級:攻 < 受
立場:攻 ≧ 受

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朔ヒロ『明烏夢恋唄』 あらすじ

無鉄砲で人が好い暁人(攻め)。
困っている者に手を貸しては
いつもトラブルに巻き込まれてしまう。

もう人助けはこりごり……。
そう思っていたところ、
公園でいじめられている子供を見つける。

子供の諍いを止めるくらいは
問題ないだろうと判断し、
いじめっ子たちから助け出した。
すると、いじめられていたのは
「豆腐小僧」という妖怪だった。

助けられたお礼にと
3枚の札を手渡され、
案内された場所は妖怪専門の遊郭。

豆腐小僧から渡された札は、
誰でも指名ができる札だった。

妖怪との性交と聞き、
怖気づいた暁人は
丁重に断って帰ろうとする。

そこへ、面倒な客に絡まれている
翠蓮(受け)がやって来た。

困っている様子の翠蓮を放っておけず、
札を使って指名。

ふたりきりの部屋で
艶っぽく誘いをかける翠蓮だが、
暁人は健全に一晩を共にする。

暁人

また来て

……おう

一晩にして
打ち解けたふたりは
約束を交わす。

ところが、現世から幽世への行き方を
知らない暁人は
約束を果たせない。

手がかりを得られないまま、
一ヶ月が過ぎていった。

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偶然が重なり、
再び幽世へと訪れた暁人。

遊郭へ向かうも、
今晩の翠蓮は
団体客の席に付きっきり
という予定だった。

そこで、せっかく来たからにはと
「豆腐小僧」に札を使って
豆腐料理を振る舞ってもらうことに。

満腹でうたた寝をしていると、
抜け出してきた翠蓮が現れ、
幽世の絶景地を案内してくれると言う。

束の間の時を過ごすふたりだったが、
翠蓮がいないことに気づいた
店員が探しにやって来た。

離れがたいふたりは身を隠し、
倉庫へと逃げ込む。

キスを交わし、昂りのままに
身体を重ねようとするが、
翠蓮がハッとしたように
「用意」をしていないと言う。

痛い思いをさせたくない暁人は、
次回へ持ちこすことを提案。

とにかく今は 

やめようぜ 

焦んなくても 

また次で…

……次…

なんて……っ

多少傷ついても構わないと
強引に迫る翠蓮だったが、
直前で侍女たちに見つかり、
連れ戻されてしまう。

倉庫に残された暁人は、
侍女たちから耳を疑う話を
聞くことになる。

翠蓮が「生気を奪う妖怪」で、
「かつて放火をした罪人」だと言うのだ。

話を聞いた暁人はショックを受け、
現世へと戻っていった。

しかし、真相かどうか確かめもせずに
翠蓮を否定したくないと考え、
幽世へもう一度訪れる。

3枚目──最後の札を使い、
翠蓮を指名。

部屋に通された暁人は、
翠蓮の「普通」と
自分の「普通」が
かけ離れていることを知る。

話を聞き、
改めて翠蓮を恋しく思った暁人は、
生気を失うことを承知の上で
何度も抱き合った。

必ずまた指名することを約束し、
再び現世へと帰る。

ところが、
次に遊郭を訪れたところ、
札なしで翠蓮を呼ぶには
三十万円が必要だと言われる。

人間の紙幣は妖怪たちにとって
価値のあるものではないからだ。

臓器や呪具のほうが良いと聞き、
現世で呪具を探し出した暁人。
「犬神」の入った壺だったが、
翠蓮を呼ぶための額には程遠く、
持ち帰って飼うことに。

すれ違う日々に
耐えきれなくなった暁人は、
自らの血を売ろうとする。

暁人に情のある帳場役が
それを嗜め、現世へと送り戻す。
悪質な妖怪に知られては、
酷い目に遭う可能性があるからだ。

翌日、暁人が目を覚ますと
翠蓮が隣に座っていた。

本物か!?

なんで 

現世に…

まさか 

抜け出して 

きたのか!?

……… 

違うよ 

楼主様に 

一日だけ 

暇を頂いた

んだ

翠蓮の痛々しい傷痕を見て、
おそらく嘘であろうことに
気づいた暁人だが、
せめて楽しい一日を過ごそうと、
現世の娯楽施設で
遊び尽くした。

空が赤くなったころ、
翠蓮は「もう来るな」
と言い残し──

結末はコミックスで!

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朔ヒロ『明烏夢恋唄』 感想レビュー

三千世界の烏を生かし、主と朝寝がしてみたい。
そんな都々逸が唄いたくなりますなぁ!
遊郭ものという設定に加え、現世と幽世ということで、切ないすれ違いのシーンが満載です。

こんなにも富豪おじさん(「金をやるから、麗しい二人が交わっているところを見せておくれ」と言う男)が存在してほしいと思った世界線はないですね。金があれば会えるのに……。
金さえあれば……!

ストーリーの切ない展開も必見ですが、156ページ(電子書籍)のシガーキス、美しくて琴線に触れまくりです。額縁に入れたくなるような尊さ。第5話の扉絵はこのシーンを別アングルで捉えているんですが、翠蓮の表情が見えないんですよ。それもあって、該当シーンに辿り着いたとき「そんな憂いを帯びた顔してたのね……」っていう、ダブルパンチが効く。エモさ大爆発でしたね。

そして、妖怪好きな人にとってすごく楽しい作品!
遊郭へ訪れるお客さんたちだったり、従業員たちに知っている妖怪を見つけるとなんだか嬉しくなりますね。特に「犬神」に愛着が湧きます。この妖怪って、かなりエグい生まれ方をするんです。首から下を土に埋められた犬の届かないところに、おいしそうな肉を置く。やがて餓死寸前になった犬の首を撥ねる。すると、犬の怨念が込もり、呪具になるという仕組み(本編では描かれていないので、残虐表現が苦手な方も安心して読めます!)。

あまりにも可哀想すぎる誕生の仕方をする妖怪。そんなこの子、暁人には懐いているんです。
なので、良い人間にもらわれた保護犬を見ているときみたいで、よかったね〜〜〜ってなる……。

描き下ろしは続編があることを匂わせて終わっていて、現世での同棲編っぽいので今からとても楽しみです!

和風ファンタジーや妖怪、切ない雰囲気が好きな方に特にオススメ!

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