2010年代の大賞総なめ【BL漫画感想】宝井理人『テンカウント』レビュー

『テンカウント』　作品の雰囲気

コミカル←|―|―|―|●|―|→シリアス　　
物語重視←|―|―|―|●|―|→人物重視
台詞重視←|―|―|●|―|―|→表情重視
けんぜん←|―|―|―|●|―|→えちえち
さわやか←|―|―|―|●|―|→じめじめ
現実主義←|―|●|―|―|―|→非現実的
特殊設定←|●|―|―|―|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|●|―|―|→受の良さ

わたし

本編はシリアスですが

巻末の描き下ろしは

クスッと笑えたり

ニマニマしたりするものが

多いので

肩の力を抜けます。

ファンタジー要素はなくて

ヘテロもおり現実的な一方、

一般的ではない

過去のトラウマと

不潔恐怖症というテーマは

特殊で見ごたえたっぷり。

こんな人にオススメ！

じっくりと距離を詰める恋愛が好きだ。
トラウマがあるほど克服方法が気になる！
ドミナントとサブミッシブの関係に興味があります。

『テンカウント』　登場人物

攻め：黒瀬　陸（くろせ・りく）

心療内科勤務のカウンセラー。城谷と「友人」になり、プライベートでのカウンセリングを行う。
#黒髪　#長身　#細身　#無愛想　#カウンセラー　#男前　#忍耐力　#寡黙　#腹黒　#ドミナント

セリフで分かる！人物像

各巻から一言ピックアップ！

「…睫毛に　ゴミがついてると思ったけど　違いました」（引用：宝井理人『テンカウント』1巻136ページ）
「近くにいるのが許されてる限りは　俺　城谷さんに好きになってもらえるように努力しますよ　　いいですか？」（引用：宝井理人『テンカウント』２巻60ページ）
「どうして　城谷さんの心は嫌がってるのに　城谷さんの体は　城谷さんのいうこと聞かないんですかね？」（引用：宝井理人『テンカウント』３巻122ページ）
「城谷さんを傷つけたくないっていう気持ちと　めちゃくちゃに汚したいっていう気持ちの両方が俺の中にあるんです　俺が歪んでるのと同じくらいあなたを歪ませたいです」（引用：宝井理人『テンカウント』４巻38ページ）
「汚れたくないっていう気持ちに被虐心が勝ってるなんて　どうしようもないですね」（引用：宝井理人『テンカウント』５巻36ページ）
「俺　会ったその日に股開きそうなビッチは好きじゃないんですよね　もっと食べられる前みたいに　警戒心でびくびくしてくれないと」（引用：宝井理人『テンカウント』６巻34ページ）

わたし

一見まともで優しそう、

実はゴリゴリのドミナント。

明確にわかるのは４巻あたり

なんですけど、

１巻の出会いから

セリフの端々に腹黒さが

にじみでていて

読み返すとニヤリとする…！

受け：城谷　忠臣（しろたに・ただおみ）

不潔恐怖症の社長秘書。理解ある周囲のおかげで働けているが、あるキッカケで克服を目指し……。
#茶髪　#長身　#細身　#美人　#社長秘書　#不潔恐怖症　#シャイ　#健気　#サブミッシブ

セリフで分かる！人物像

各巻から一言ピックアップ！

「汚れた手で触った手袋にも汚れが移ってしまった　早く捨てないと…カバンに予備がまだあるから大丈夫──」（引用：宝井理人『テンカウント』1巻62ページ）
「せんせい　って　黒瀬くんの方が年上みたいで変な感じですね　ね　黒瀬先生？」（引用：宝井理人『テンカウント』２巻177ページ）
「お　終わったら黒瀬くん　俺がいいって言うまで　手…洗ってくれますか？」（引用：宝井理人『テンカウント』３巻164ページ）
「社長の時間を作るのが仕事ですから　何かありましたか？」（引用：宝井理人『テンカウント』４巻120ページ）
「「行ってみたいところ」をあらかじめ決めておかなきゃいけない…！　えー……っと　カップルじゃないんだしここは駄目だ…っていうかカップル向けのレジャー施設ばっかりだな世の中は…」（引用：宝井理人『テンカウント』５巻138ページ）
「かなり意を決して言ったのに断られると…っ　もう一生言わない」（引用：宝井理人『テンカウント』６巻128ページ）

わたし

かわいい受けですよホント……。

潔癖症とその原因となる

トラウマのせいで

恋愛を避けてきた子が

メールひとつ送るのにも

一生懸命になってですね。

表情も素直でえっちで最高です。

攻めと受けの関係性

年齢：攻　＜　受
身長：攻　＞　受
体格：攻　＝　受
階級：攻　＝　受
立場：攻　＝　受

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宝井理人
『テンカウント』

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このキャラも重要！

わたし

メインキャラの他にも、

こんな魅力的なキャラが

登場しますよー！

三上　健

城谷の同僚。営業部。人当たりがよく面倒見の良い性格。
※携帯電話の表示でフルネームが出ましたが、「健」の読み方が不明です。

倉本

城谷が秘書をしている社長。不潔恐怖症に理解があり、城谷に優しい。

西垣

黒瀬の幼少期、近所にいた不潔恐怖症の青年。

植田

城谷の幼少期、城谷の父に対し想いを寄せていた女子高生。

『テンカウント』　各巻のあらすじ＋見どころ

ここから先はネタバレを含みます。
ご注意ください。

１巻

潔癖症の社長秘書・城谷は
偶然出会ったカウンセラーの黒瀬から、
潔癖症を克服するための
個人的なカウンセリングを受けることになる。
10項目を1つずつクリアする療法を進めるうち、
次第に黒瀬に惹かれていく城谷だが……？

このやりとりが萌える！

ありがとうございます　

黒瀬くん

………………

頑張ったのは　

城谷さんですよ　

偉かったですね

引用：宝井理人『テンカウント』1巻76ページ、新書館、2014年

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２巻

心を預けはじめていた黒瀬から、
突然カウンセリングの終了を告げられた城谷。
ショックで引き籠もる彼のもとに、
再び黒瀬から呼び出しのメールが届く――。
黒瀬の隠された胸の裡を知り、城谷は……?

このやりとりが萌える！

あの時　

黒瀬くんは　

気持ち悪く

なかったんですか？　

その　

医院で──

こんな傷　

だらけの手　

な……っ　

舐めたりして……

気持ち悪く　

ないですよ　

何度でも

言いますけど　

俺は　

城谷さんのことが　

好きですから

引用：宝井理人『テンカウント』2巻128-129ページ、新書館、2014年

３巻

二人での外出中、
黒瀬とのキスを想像して、
体を反応させてしまった城谷。
なぜこんなふうになってしまうのか、
自分でもわからないまま、
熱い体をなだめてゆく
黒瀬の手を止められない。
裏腹な心と体に翻弄される城谷は……？

このやりとりが萌える！

もし　

俺も黒瀬くんのことが　

好きだって言ったら──

どうなるんですか？　

……そうしたら　

俺の恋人に　

なってくださいって　

お願いします

引用：宝井理人『テンカウント』3巻60ページ、新書館、2015年

４巻

黒瀬の指に、言葉に、
翻弄される城谷。
そんな彼に黒瀬は告げる。
「城谷を好きになった理由」を……。
ショックで黒瀬の元を飛び出した城谷は、
疼く体に自ら手を伸ばしてしまい、
ずっと目を背けてきたトラウマを
呼び起こされる――…。

このやりとりが萌える！

気持ち悪いのは　

俺なのに　

黒瀬くんじゃなくて　

俺なのに　

くろ　

黒瀬くんを　

汚して　

ごめんなさい

城谷さんが　

汚れてるんですか？　

そうなんですか　

じゃあ　

俺は汚れて　

ドロドロになって　

傷ついた城谷さんが　

好きです　

そう言う風に思う俺も　

一生綺麗にならないくらい　

汚れてるんでしょうね

引用：宝井理人『テンカウント』4巻156-158ページ、新書館、2015年

５巻

二ヶ月ぶりに再会し、
初めて自分の意志で
黒瀬の手を取った城谷。
タクシーを拾い二人で帰途につくが、
黒瀬は先に降りて、
あっさり帰宅してしまう。
とっさに後を追う城谷だが……？

このやりとりが萌える！

黒瀬くんは　

俺が嫌がること　

ばっかりする

………

城谷さんが　

そうして欲しいって　

思ってるからですよ

引用：宝井理人『テンカウント』5巻112ページ、新書館、2016年

６巻

時を重ね、体を重ね、
確実に距離が近づいていく二人。
城谷が黒瀬を誘って外出した先で二人は、
城谷が潔癖症となったきっかけに関わる
女性と遭遇する。
様々な気持ちが蘇る中、城谷は……!?　
そして、手帳の10項目に書いたのは……？

無愛想なカウンセラーと
潔癖症の社長秘書の恋、
ついに完結!!

このやりとりが萌える！

俺　

黒瀬くんに　

恋してたんですねぇ　

黒瀬くんに対して　

腹が立ったり　

ドキドキしたり　

嬉しくなったり　

…………　

今頃気が付い　

たんですか？

引用：宝井理人『テンカウント』6巻176ページ、新書館、2018年

『テンカウント』　受賞歴

わたし

いろんな方々から

「この作品は

　最高だぜ」って

お墨つきされた

作品ですよ〜！

全国書店員が選んだおすすめBLコミック

「全国書店員が選んだおすすめBLコミック2015」　第1位
「全国書店員が選んだおすすめBLコミック2016」　第1位

BLアワード

「BLアワード2015」コミック部門　第1位

このBLがやばい！

「このBLがやばい！2016年度」　第1位

SUGOI JAPAN Award

「SUGOI JAPAN Award 2017」　漫画部門第3位

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上は最新刊の書影です

『テンカウント』　感想レビュー

１〜６巻すべて読んだ上での感想です。
まだ最後まで読んでいない方はネタバレ注意！

一番カウンセリングが必要なの
植田さんではないだろうか……。
女子高生時代からだいぶ歪んどる。

それはさておき、
よき最終話でした。
タイトルで始まり、
タイトルで終わる、
素敵な物語ですね。

謎が徐々に明かされていくのが
心地よいというか、
納得できる作品でもあります。

たとえば城谷は
自分の実父に恋心を抱き、
それを自覚したのが
植田さん事件だったわけですが、
そうなると、
倉本社長に惚れるのが
自然な流れだと思うんですよ。
でも選んだのは黒瀬で、
何故か、というと
ドミナントとサブミッシブの話へと
移行していく。

１巻のあとがきからずっとSMについて
触れられているけれど
今ひとつピンときていなかったのが、
徐々につながっていきます。
（サディストとマゾヒスト（肉体的嗜虐）ではなく
　ドミナントとサブミッシブ（精神的支配）なので
　ご安心ください。痛々しい描写はゼロです）

たぶん３巻くらいで
止まっている人の中に
「こんなに簡単に潔癖症は治らんし」
となっている人がいると思うんですが
そう仰る方にこそ最後まで読んでほしい！

表紙の綺麗さから
本当に繊細なストーリーに
見えますが、本質的には
「汚いものに穢されたい」
「歪んだ者をさらに歪ませたい」
という変態的な要素があってですね。
私としては、そこが最も
魅力的だと感じますね。

もちろん過去のトラウマが
原因で…可哀想に…と素直に
読んでもいいんですが、
「汚いものに穢されたい、
　だからこそ自分の中の
　“汚くない”の水準を
　上げるための
　言い訳を作った」
と読むと背徳感マシマシで
うめぇ〜〜ってなります。

たぶんあのときの城谷って
「父親で」抜いてしまった、
ってなってるんですけど、
騎乗位で相手にリード権奪われて
「汚されている状態の人で」
抜いてしまった、が
正しい気がするんですよね。

このあたりは読み手によって
捉え方も異なるというか、
良い具合に余白を残しているので
全巻通して読み終えてから
思いふけるのにも良い作品です。

休日の前日から一気読みして
休日に悶々と考えるのも
楽しいですよ、
とオススメしときます。

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宝井理人
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