生と死は表裏一体【BL漫画感想】朝田ねむい『CALL』レビュー

朝田ねむい先生の新作(2021年7月末時点)『CALL』を紹介します。

若い頃に読みたかった気もするし、
今だからこそ沁みるものがある気もするし、
数年後に読んだらまた違った感想がありそうな気もします。

とくにラストシーンのセリフが良いんですよ……。
そこだけ抜粋すると良さが伝わらないので
(いろんな流れがあって響くものがある)
本記事では引用しませんが、
他にも魅力たっぷりな1冊なので
詳しく紹介していきますね!

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『CALL』この作品を読むべき人

  • 「オープンクズな年下攻め」が好きな人
  • 「健気で不憫なおじさん受け」を見たい人
  • 「嘘から始まり本気になる関係」に萌える人
  • 「ストーリー重視なBL漫画」を求めている人

朝田ねむい『CALL』 あらすじ

あんたさ
俺のために生きる
とか言えないわけ?

朝田ねむい『CALL』帯キャッチコピー

バイトが長続きしないハルヒコは金欠状態。
高給への興味本位で見ていた
ウリ専の店の前で偶然出会ったアキヤマに、
なりゆきでウリ専デートサービスの従業員だと偽ってしまう。
金を巻き上げるためにエッチもせず、
上手くアキヤマを騙し始めたハルヒコだが、
アキヤマのあまりに純粋な対応に
気持ちが変化して……!?

同時収録作

表題作のみ

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朝田ねむい『CALL』 作品の雰囲気

コミカル←|―|―|―|●|―|→シリアス
さわやか←|―|―|―|●|―|→じめじめ
物語重視←|―|―|●|―|―|→人物重視
台詞重視←|―|―|●|―|―|→表情重視
けんぜん←|―|●|―|―|―|→えちえち
現実主義←|―|●|―|―|―|→非現実的
特殊設定←|―|●|―|―|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|●|―|―|→受の良さ

この先ネタバレを含みます。
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ヘヴィー度チェッカー

身体虐待……………………………なし
精神虐待……………………………なし
自傷行為……………………………あり
流血表現……………………………あり
内臓描写……………………………なし
近親相姦……………………………なし
モブ強姦……………………………なし
主役の死……………………………なし
リバ表現……………………………なし

修正について

見えない角度での構図

朝田ねむい『CALL』 登場人物

攻めキャラクター紹介

臼井 ハルヒコ

#黒髪 #中背 #細身 #下まつげ #フリーター #22歳(〜27歳) #飽き性 #クズ #プライド #おしゃれ #正直 #ノンケ

おっさんと飯食ってキスして10万か… スゲー割いいじゃん!

引用元:朝田ねむい『CALL』31ページ、オークラ出版、2021年

なあ もっと聞かせてよ アキヤマさんのエロい妄想 妄想通りにやるからさ いくらでも

引用元:朝田ねむい『CALL』119ページ、オークラ出版、2021年

受けキャラクター紹介

アキヤマ アツシ 

#黒髪 #長身 #細身 #眼鏡 #会社員 #36歳(〜41歳) #几帳面 #健気 #不憫 #一途 #照れ屋 #衝動的 #諦観 #ゲイ

あ…その…これだと恥ずかしいから…抱きしめてくれないかな…ハルくん…

引用元:朝田ねむい『CALL』106ページ、オークラ出版、2021年

連絡が取れて…会えて 顔を見て 喋って もしいけそうなら口説こうと思ってた

引用元:朝田ねむい『CALL』202ページ、オークラ出版、2021年

朝田ねむい『CALL』 カップル比較表

年齢:攻め < 受け
身長:攻め < 受け
体格:攻め = 受け
立場:攻め = 受け
階級:攻め < 受け

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朝田ねむい『CALL』 おすすめポイント

その1:騙していただけのつもりが…(46〜51ページ/105ページ)

ふたりが初めて出会った場所は、
ゲイ向けデートサービス店の前。

高卒フリーターで長続きしないハルヒコは
簡単に稼げる仕事を探していました。

それを友達に話したところ、
ゲイ向けの風俗を薦められます。

男相手に風俗はできないと言いつつ、
性的なことをしなくてもいいなら…
と興味本位で看板の料金表を見ていたところ
アキヤマから声をかけられたのです。

そこで騙してやろうと
従業員のフリをしたら、
2時間一緒に焼肉を食べただけで
10万円もゲット!

うまみを覚えたハルヒコは
アキヤマと連絡先を交換し、
たびたびデートへ出かけるように。

最初は「デートしただけで金くれるオッサン」
程度にしか思っていなかったのに、
手をつなぐだけで嬉し恥ずかしそうにするウブな表情や
映画を見て号泣してしまう姿、
ハルヒコに薦められたことをすぐにやってみる素直さに
キュンとすることが増えていきます。

いや

入れてないから

ヤってないだろ

いやいや

金目当てだから

と言い訳したり

よりにも

よって…

こんな

オッサンで…

てめ───ッ 

オッサンのくせに 

かわいこぶってんじゃねー


と罵倒したりしつつも、
胸キュンがとまらないハルヒコ。

徐々に「あれ? このオッサン可愛いかも」
となってゆく過程が最高です。

最初のほうのハルヒコはクズ度が高いぶん、
本当に「好き」になってきているんだな
と感じられます。

嫉妬のあまり無理矢理ホテルへと連れ込む
シーンも見どころのひとつ。
本人は嫉妬を自覚していない
(自覚しないようにしている)のも
青くていいんですよ……。

飽き性なのにアキヤマとの関係だけは
続けているというところからも
無自覚に惹かれていることが分かります。

「金のため」と言いながら
実際は金のためじゃなくなってゆくのがグッとくる。

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その2:うっかり告白しちゃう(125〜126ページ)

この125〜126シーンの一連のセリフ、動作、
アキヤマの反応、そして男前なハルヒコの提案
すべて合わさって素敵なんですよ。

セリフだけでも
「あっ こういうの好き」となる方がいるはずなので
引用しますね。

俺フツーに

アキヤマさん

好きだし

ヤレるし

金とか…

まあーくれるなら

嬉しいけど

無くても…

…会いたいし…

あっ

でも別に

友達とかさ〜

そのへんの男は

触りたいとかも

思わないから

やっぱ

ゲイじゃ

ないって俺

なんか

照れくせー

んだけど

って

えっ

あれ? 今

俺告った?

えっ

マジ?

このシーンの画角や構図も素晴らしいんですよ。
ハルヒコのアップだけではなく、
ふたりの背中越しやサイドから写しているので
両者の反応が常に見えるかたち。

アキヤマは、ほぼ黙って聞いています。

後ろ姿しか写っていないコマも多いのですが、
それだけでも伝わってくるものがあります。
喜びとやるせなさが混ざったような、
なんともいえない感情が渦巻いている背中。

これが後につながってくるのも
読み返したときに響くのです。

これからも読むたびに
新たな発見があることでしょう。

その3:再会、そしてまた再会(169ページ/196ページ)

本作は1巻完結ものにしては珍しく、
2回の再会が描かれています。

一度目は、自殺失敗後のアキヤマと。
最後に連絡をしてから半年後の再会です。

えっ…

っと…

ハルくんって

僕のこと

まだ好きでいてくれてるの

そう聞かれたときの
ハルヒコの反応と表情が堪りません。

口では何も言っていませんが、
「好きに決まってんだろバカ!!!!!!」
と顔に書いてあるんですよ。

それでも「好き」だけでは
うまくいかず、別れることを選びました。

──5年後。

ハルヒコとアキヤマの間にあったことを
面白おかしく話しているシーンから始まります。
語り手はハルヒコの同僚。
その場にいるのはハルヒコと後輩。

ここが感慨深い。

何を思ってこの男に話したのか、
いつ話したのか、
軽口を叩けるようになったのは
どれくらい後のことだったのか……。
多くは語られないぶん、
5年という月日の流れを感じます。
昔のハルヒコだったら
面白おかしく話す男にムカついて
会社辞めてますね。

変わったのは
ハルヒコだけではありません。

何度も季節を巡り、
少しずつ立ち直ったアキヤマ。
再びハルヒコに連絡を取ります。

色々諦めていく中で、
どうしても諦めきれなかったのです。

そして果たされる2回目の再会。

ここもまた良いシーンなんですよ。

…あんたと

別れた後に

また死んでんじゃ

ないかって

名前検索したら…

そこの

ブログ

出てきたから

写真とか

載ってたし

ああよかったって

……

ハルヒコずっとアキヤマのこと好きじゃん……。

2人の名前が「ハル」と「アキ」なのに
出会った季節が「フユ」で
再会した季節が「ナツ」なのもエモい。

5〜7話にかけて
2回の別れと再会があるという
怒涛の展開でありながら、
駆け足な印象もなく、
まとまっているのも
おすすめポイントです。

不器用ながらも生きて、
想いあうふたりに心が打たれます。

1巻完結でしっかりとしたストーリーの
BL漫画を求めている方は、
ぜひ一度読んでください。

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朝田ねむい『CALL』 読んだあとの豆知識

わたし
わたし

りんどぶるむ とは…?

ドイツ語で「飛龍」や「犬龍」を意味するそうです。
ファイナルファンタジーや遊戯王などでもキャラクターとして存在するそうですね。
このママかパパはゲーマーなんでしょうか。ちょっと背景が見えて面白い。

それにしてもリンドブルムちゃんかわいいねえ!

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