男前ドラァグクイーン × 年上ノンケリーマン
タイトル | あした虹がでなくても |
作者 | きはら記子 |
巻数 | 1巻 |
連載状況 | 完結 |
レーベル | onBLUE comics |
出版社 | 祥伝社 |
紙の本発売日 | 2021年11月25日 |
電子書籍発売日 | 2021年11月25日〜 |
ゲイバーで働くドラァグクイーン・ホイップ(本名・千歳)はトークアプリで「不眠症のリーマン」に毎夜グチを話すのが日課。顔も知らない彼に淡い恋心を抱いていたが、どうせ会うことはないと高をくくっていた。しかし、店を探しだした彼(本名・凌)が突然ゲイバーを来訪。女装姿を笑われ、最悪な気持ちで追い返してしまう。後日、真摯に謝ってくれた凌と相対して千歳は気づく。彼を本気で欲しくなっている自分に―――。思いが募るほど女装以外の姿を見せるのが怖くなる千歳と、頭でっかちで自分の気持ちに無自覚なノンケの凌。未完成な2人が自分の殻を壊しながら惹かれ合う、両片思いラブ!
表紙からエモすぎる『あした虹がでなくても』。
意味深なタイトルに、淡色で描かれたふたりの表情、そして「ドラァグクィーン攻め」の文字に血湧き肉躍った筆者は秒で買いました。
『一途な犬は諦めない』のスピンオフ作品なので、先に読んでおくと人物たちの関係図が分かりやすくなります(※単体でも読めます)。
では早速、本作品の詳しいあらすじから紹介していきます!
きはら記子『あした虹がでなくても』 あらすじ
君に
引用元:きはら記子『あした虹がでなくても』帯キャッチコピー
見合う
人間に
なりたい
ゲイバーで働く千歳は、源氏名「ホイップ」を名乗り女装で接客している。
毎晩のように客の愚痴を聞くことに、辟易する日々。そこで、トークアプリを導入して名前も顔も知らない相手に話を聞いてもらっていた。相手はランダムのはずだ。しかし、毎回同じ時間帯にログインするせいか、偶然二度目の会話をした人物がいる。通称“不眠症のリーマン”だ。
互いに匿名のまま仲が深まってゆくふたり。
ある日、“不眠症のリーマン”が千歳の店を訪ねてくる。駅前のバーを渡り歩き、探していたのだと言う。女装姿の千歳を見た彼は、「すごい格好だなあ」と口にした。
デリケートな部分へ土足で踏み込んでくる姿に落胆と憤りを覚えた千歳。というのも、“不眠症のリーマン”がアプリで見せる優しさに惹かれ始めていたからだ。
「二度と来ないで」
そう告げて頭から水を浴びせたが、”不眠症のリーマン”は再び店に現れた。
何度も謝りにくる“不眠症のリーマン”は名前を植木と言った。
不器用で気弱ながらも、諦めず健気に通い、千歳との間にできてしまった亀裂を修復しようと試みる。その中で、セクシャルマイノリティに対する知識のない植木は、無意識に無神経な言動をすることもあった。しかし、そのたびに素直に謝ったり反省してメソメソと泣いたりする可愛らしさに、千歳は再び惹かれていった。
やがて二人は元のように話したり、遊びに出かけたりするようになる。
千歳はいつも、女装姿で会うようにしていた。
何度目かのデートで、偽物の胸が当たって頬を赤らめる植木。
その反応に、「このまま女装だったら植木と付き合えるんじゃないか」そう思った千歳は男の姿を見せることが怖くなり──
続きは本編をご覧ください!
きはら記子『あした虹がでなくても』 登場人物(キャラクター紹介)
『あした虹がでなくても』のメインCPについて、どんなキャラクターかをまとめました!
攻め:綾瀬千歳(あやせ・ちとせ)/マロン・ホイップ・ディーヴァ
ゲイバーで働きながら、月に一度ドラァグクイーンとしてステージに上がっている。
#茶髪 #中背 #華奢 #女装 #ドラァグクイーン #ドレス #強気 #短気 #男前 #努力家 #現実主義 #健気 #ゲイ
凌さんに会いたい
引用元:きはら記子『あした虹がでなくても』97ページ、祥伝社、2021年
いや 会いたくない!
…会いたい
いや でも やっぱり
男のカッコ見せんのこえ~~~~~~っ
許すよ?
引用元:きはら記子『あした虹がでなくても』148ページ、祥伝社、2021年
言い訳なんか
しなくてもさ
受け:植木凌(うえき・しのぐ)
会社員で役職は課長。不眠症で、夜な夜なトークアプリで話している。
#黒髪 #長身 #細身 #眼鏡 #スーツ #課長 #素直 #気づかい #頑固 #衝動的 #ロマンチスト #高所恐怖症 #ノンケ
真ん中が千歳くん?
引用元:きはら記子『あした虹がでなくても』67ページ、祥伝社、2021年
わかるよ
一番目を惹くのが
千歳くんだから
何って…
引用元:きはら記子『あした虹がでなくても』130ページ、祥伝社、2021年
彼を怒らせてしまったから
坊主にでもしようかと思ってね
きはら記子『あした虹がでなくても』 作品の雰囲気
コミカル←|―|―|―|―|●|→シリアス
さわやか←|―|●|―|―|―|→じめじめ
物語重視←|―|●|―|―|―|→人物重視
台詞重視←|―|●|―|―|―|→表情重視
けんぜん←|―|―|●|―|―|→えちえち
現実主義←|●|―|―|―|―|→非現実的
特殊設定←|―|●|―|―|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|●|―|―|→受の良さ
シリアス寄りですが、爽やかなヒューマンドラマです。BLはもちろん、会社での上下関係や女装への偏見、短気な若者の成長なども描かれている作品。
怖いものチェック
身体虐待……………………………なし
精神虐待……………………………あり
自傷行為……………………………なし
流血表現……………………………なし
内臓描写……………………………なし
近親相姦……………………………なし
モブ強姦……………………………なし
主役の死……………………………なし
リバ表現……………………………なし
女装して街の中心地で待ち合わせをした千歳(攻め)に対し、近くにいた人々が好奇の目で見て「俺って言った ほらやっぱり」「でかい女がいるなと思ったらやっぱり女装」などとざわつくシーンが一瞬入ります。
きはら記子『あした虹がでなくても』 感想レビュー
読み終わったあとにタイトルが沁みる。
「虹」と「ドラァグクイーン」という単語から、レインボーフラッグ(※セクシャルマイノリティの象徴)の話なのかなと読んでいました。良い意味でそこまでシリアスではないというか、説教ぽい雰囲気だったり重苦しかったりする物語ではありません。
ただ、「虹」=レインボーフラッグである認識は正しいはず。私が細かいところを見逃していたら恐縮ですが、作品内に虹そのものに関する言及は見当たらないからです。これを踏まえた上で、読み終えた後にこのタイトルを見ると「あした貴方が私を受け入れてくれなくても、私は変わらずに貴方のことが好き」といったニュアンスを感じます。優しくて健気で切なくて、胸がいっぱいになる。
なぜ「虹がでなくても(≒私を受け入れてくれなくても)」の続きが「変わらずに好き」だと思ったかというと、千歳(攻め)とゲイバーのママ(モブ)の言動がそう感じさせるのです。
まずゲイバーのママの恋愛。酒屋の男に惚れていたけれど、結婚報告を受けてしまいます。このときのシーン(108ページ)、モノローグだけで見るとホイップに対して「あなたの笑顔がわたしは 大好きよ」と言っています。しかし映像として捉えると「これからもよろしくママ」と呼びかける酒屋の彼に言っているように見えるのです。こういうダブルな演出もエモい素敵な作品。
次に千歳は、植木(受け)に対して「なんで好きだって言った男に会いに来て泣いて謝れるのに その先が言えないの! しっかりしろよ 振るときくらい」(147ページ)と男前に背中を押します。失恋すると分かっていても、植木を激励する優しさが現れています。振られたとしても植木が好きなことに変わりはないからなのでしょう。格好良すぎる。ちなみに千歳は振られません。なのでハッピーエンド好きさんにもちゃんとオススメできます。
『一途な犬は諦めない』のスピンオフなので、こちらを読んでおくとアドバイス役として登場するキャラ・湘吾の背景が分かって深みが増します。ちなみに、本作の千歳(ホイップ)が初登場するのはコミックス『一途な犬は諦めない』に収録されている「対岸の犬を呼んで」です。個人的には当時のちょっとチーク濃い目なメイクのほうが好き(ドラァグクイーンの派手な化粧が大好きマン)。
描き下ろしは女装攻めの色気とおいしさがギュッと詰まった最高のえっちが拝めます。連載追っていた方でも、女装攻めファンならコミックスも必見!
コメント