人間としてはキミはすでに死んでいる
僕の所有物に過ぎない
真面目で爽やかな佐田は、同僚や生徒から人気の高校教諭。ある日、放課後の見回りをしていると、そこには女子生徒に刃物で襲いかかる怪しい人影が。咄嗟に逃げようとするも間に合わず、佐田は命を落としてしまう。しかし、冷たい台の上で佐田は目を覚ましたのであった……。
今回紹介する作品は朝田ねむい先生による本格ゾンビBL「スリーピングデッド」!
雑誌掲載時は「リビングデッド」という直球なタイトルでしたが単行本用のタイトルも意味深で素敵ですね。
私、映画はゾンビとサスペンスとSFをローテーションしているような人間なので、本作の単行本を楽しみにしておりました。「本格ゾンビ」とあったので、もしかして原点回帰の食わないゾンビか!? と期待して開きました。モダンゾンビでした(ゾンビ好きにしか興味のない話題ですみません)。
気になっているけど少し怖くて迷っている…という方のために、本作について語っていきます!
朝田ねむい『スリーピングデッド』 作品情報(作者/レーベル/発売日など)
タイトル | スリーピングデッド (上下巻) |
連載状況 | 完結済 (掲載誌『オリジナルボーイズラブアンソロジーCanna』) |
作者 | 朝田ねむい |
レーベル | Canna Comics |
出版社 | プランタン出版 |
発売日 | 上巻:2021年8月27日 下巻:2022年9月30日 |
攻め | 高校教諭 |
受け | マッドサイエンティスト |
朝田ねむい(あさだ・ねむい)
11月22日生まれ。デビュー作『兄の忠告』最新作『スリーピングデッド』(2021年9月現在)
朝田ねむい『スリーピングデッド』 登場人物紹介(攻め/受けキャラクター設定)
攻め:佐田聖二(さだ・せいじ)
#黒髪 #長身 #細身 #顔がいい #傷痕 #30歳 #高校教師 #現代文 #両親と不仲 #姉がいる #真面目 #慎重派 #綺麗好き #優しい #ミステリ好き #執筆活動 #ゲイ
なんで俺なんだ…なんで
引用元:朝田ねむい『スリーピングデッド』上巻75ページ、2021年、プランタン出版
俺を生き返らせた
なんで
あのまま死んでいたら
俺は殺人鬼に殺された
哀れな被害者の一人だったのに
そんなにゲイが珍しかったか?
引用元:朝田ねむい『スリーピングデッド』上巻205-207ページ、2021年、プランタン出版
興味あるんだったらやってみるか?
あんたみたいのが案外ハマるんだ
興味あるから
こんなことしてきたんだろ?
やってみたいなら抜いてやろうか?
口で
俺けっこう上手いよ
受け:間宮冬邪(まみや・とうや)
本名:沢尻冬邪
#茶髪 #小柄 #細身 #めがね #ヒゲ #白衣 #若禿 #30歳 #研究所所長 #憧れの大叔母 #両親嫌い #猟奇的 #大雑把 #ドライ #好奇心 #効率主義 #執着 #偏食家
僕はこのカスタードドーナツが大好きでね
引用元:朝田ねむい『スリーピングデッド』上巻33ページ、2021年、プランタン出版
おやつは必ずこれだ
忍び込んで盗むのはリスクが高い
引用元:朝田ねむい『スリーピングデッド』上巻105ページ、2021年、プランタン出版
他人を介せばすぐにバレる
だから自分たちで殺すのが
一番手っ取り早いと僕は思う
朝田ねむい『スリーピングデッド』 作品の雰囲気(ヘヴィー度チェッカーつき)
コミカル←|―|―|―|●|―|→シリアス
さわやか←|―|―|―|●|―|→じめじめ
物語重視←|―|●|―|―|―|→人物重視
台詞重視←|―|―|●|―|―|→表情重視
けんぜん←|―|●|―|―|―|→えちえち
現実主義←|―|―|―|●|―|→非現実的
特殊設定←|●|―|―|―|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|●|―|―|→受の良さ
ヘヴィー度チェッカー
身体虐待……………………………あり
精神虐待……………………………なし
自傷行為……………………………なし
流血表現……………………………あり
内臓描写……………………………あり
近親相姦……………………………なし
モブ強姦……………………………なし
主役の死……………………………あり
朝田ねむい『スリーピングデッド』 あらすじ
ただ人間を
引用元:朝田ねむい『スリーピングデッド』上巻76ページ、2021年、プランタン出版
主食とする
だけのことだ
牛や豚を食べるのと
そう変わらない
そういう
生き物なだけさ
高校で現代文の教師をしている佐田は、
生徒から「サダセン」と呼び慕われ、
教師仲間からも好かれている。
ある日、女生徒が学校付近で
追いかけられる事件が勃発。
教師たちは毎晩、
交代で見回りすることになった。
佐田が当番を請け負った夜、
路地裏で密接している
男女を発見する。
女が生徒だと分かった佐田は
「もう遅いから早く帰りなさい」
と注意するが、様子がおかしい。
自販機の明かりで映し出されたのは、
滅多刺しにされた女子高生と
血まみれのナイフを持った男だった。
咄嗟に人を呼ぼうとするが
背後から刺され──
気がつくと、
手足を拘束されていた!!
「起きたのか 気分はどうだね」
そう言いながら入ってきたのは
白衣を着た怪しい男・間宮。
「BII-E3細胞」という
妙なものを打たれた佐田は、
「ゾンビのようなもの」に
なってしまった。
どんなに傷つけられても
すぐに身体が修復されて死なず、
食べ物は人間の身体のみしか
受けつけない。
いっそ食べずに餓死しようとするが、
間宮により阻止されてしまう。
「解剖台に縛り上げて
口に漏斗を突っ込んででも
食わせて生かす」
やがて間宮は佐田のために
人を殺すことを計画し始め──
続きはコミックスで!
朝田ねむい『スリーピングデッド』 感想レビュー
ゾンビにされてしまったことで、人肉を食わずには生きていけない身体になってしまった佐田。人肉を調達するため、どんどん罪深い方向へと向かっていくストーリー。食糧にするために選ぶのは、前科のある人物。それにより多少罪悪感は薄れるものの、かなりグロテスクな方法で処分されます。内臓や血肉はデフォルメされていますが、読者を選ぶタイプの作品です。私は選ばれましたね。こういうのだーいすき!
「えっ、BがLしないんですか!? ほぼホラーとサスペンスなんですか!? LOVEは!?」
答えはというと……「サスペンス大さじ2、LOVE小さじ1」くらいの分量ですね。全体244ページに対して、恋愛要素が描かれるのが190ページ過ぎてから。
でも、この小さじ1が効いてるんですよ。
まず受け・間宮のかわいらしさよ。
「あんたは別に好みじゃない」と佐田に言われて「なんだと?」と立腹する(192ページ)。
「寝ても覚めても彼のことばかり考える」ようになり「これが恋なのか?」と初恋に目覚める(221ページ)。なんか……この子かわいいぞ!? ってなります。
佐田は間宮によって「生かされている」状況なので、途中まで振る舞いが攻めっぽいんですよ。
試し読みしていただけると分かると思うのですが、単行本の帯とあらすじに「高校教師×マッドサイエンティスト」って書かれているのを見て「あ、そっちなんだ!?」ってなりました。でも強引に変えた印象はなく、ギャップが良きでしたね。
そして攻め・佐田の色気。
さきほど間宮の振る舞いが途中まで攻めっぽいという話をしていましたが、佐田も受けっぽかったのです。優しくてお人好しで真面目な優等生。実験用の猿と仲良くするし、お部屋の掃除もする。
でも「キミの精子がゾンビになっているかみてやろう」(202ページ)と間宮に押し倒されてからの逆転がすごいんですよ。今までの良い子風は何だったのかというくらい色気とオスみがマシマシ。これは攻めだァ。
192〜209ページの攻防戦と描き下ろし(229〜234ページ)はBLとしてキュンとくる部分もあるので「シリアス系でブロマンスっぽそう」と感じた方も手に取ってみてください。ちゃんとした恋愛描写は下巻に回る様子ですが、上巻でもほのかな恋の始まりにニヤリとすることでしょう。
少し変わったBLを読みたいと思っている方
キラキラのラブキュンより人間臭さを感じたい人
ゾンビに惹かれる同志達にオススメです!