じんわり沁みる【BL漫画感想】絵津鼓『メロンの味』レビュー

俺 ナカジョーくんがいい!

ライブハウスで働く中城と常連客の木内。
ふたりの同居は急だった。
木内は同棲していた彼女と別れたばかりで
しばしの寝床を探していたとのこと。
さらには人肌がないと眠れないから
一緒に寝たいと言う。
自分はゲイだと明かして断ろうとする中城。
だが、「いいよ!」と言い切られてしまい…

本日のオススメは絵津鼓先生の『メロンの味』です。

目を惹くカバーイラストに魅了された方も多いのではないでしょうか。上下巻完結で同時発売されているので、一気に読めるのも嬉しいですね。連載を追っていた方にも描き下ろしのアフターエピソードはぜひ読んでほしい。心があたたまります。

この記事では『メロンの味』上下巻のあらすじ、登場人物、特典情報まとめ、感想レビュー(ネタバレ含む)を紹介していきます!

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『メロンの味』 作品情報

タイトルメロンの味
連載状況完結済(上下巻完結)
作者絵津鼓
レーベルihr HertZ SeriesH&C Comics
出版社大洋図書
発売日紙の本:2021年10月1日
電子書籍:2021年10月4日〜
攻め誰かと一緒じゃないと眠れないノンケ
受け一人で豪華な家に住んでいるゲイ
作者プロフィール

絵津鼓(えつこ)

デビュー作品は『IN THE APARTMENT』。最新コミックスは本作『メロンの味』。連載中の作品に「ハッピーマジカルNIRVANA」がある。

『メロンの味』 作品の雰囲気

コミカル←|―|―|―|●|―|→シリアス
さわやか←|―|―|―|●|―|→じめじめ
物語重視←|―|●|―|―|―|→人物重視
台詞重視←|―|●|―|―|―|→表情重視
けんぜん←|―|●|―|―|―|→えちえち
現実主義←|●|―|―|―|―|→非現実的
特殊設定←|―|―|●|―|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|●|―|―|→受の良さ

ヘヴィー度チェッカー

身体暴力、精神虐待、自傷行為、流血、内臓、近親相姦、モブレなどの有無を書いています。
若干ネタバレとなります。
確認したい方のみ下の「タップ(クリック)して閲覧」からご覧ください。

身体暴力……………………………なし
精神虐待……………………………あり
自傷行為……………………………なし
流血表現……………………………なし
内臓描写……………………………なし
近親相姦……………………………なし
モブ強姦……………………………なし
主役の死……………………………なし

メインキャラクターの過去の傷が精神的なものです。

『メロンの味』 登場人物紹介(攻め/受けキャラクター設定)

作中の言葉などを引用しながら紹介していきます。
未読の方でネタバレを完全回避したい方はご注意ください!

攻め:木内昌汰(きうち・しょうた)

#茶髪 #長身 #細身 #30歳前後 #元バンドマン #売れっ子 #軟派 #不眠症 #素直
#ミステリアス #ノンケ #字が綺麗 #優しい #情緒不安定

自分で自分のことちゃんと大事にしてたら 大事にしてくれる人と絶対出会えるから!!

引用元:絵津鼓『メロンの味』上巻72ページ、大洋図書、2021年

…ねぇ 俺の好きなとこ 1コでもある? 
ふふふ 俺はね ナカジョーくんのこと 好きなトコしかないよ

引用元:絵津鼓『メロンの味』下巻102-103ページ、大洋図書、2021年

受け:中城親(なかじょう・ちかし)

#黒髪 #中背 #細身 #ライブハウス店員 #富裕層 #親と不仲 #ゲイ #料理上手 #綺麗好き
#健気 #不憫 #優しい #気づかい #自立心

なんで俺は 普通に愛されたい相手ばっかり こんな風になるんだろ…

引用元:絵津鼓『メロンの味』上巻164ページ、大洋図書、2021年

…木内さんと寝たがる女の気持ちがわかる

引用元:絵津鼓『メロンの味』下巻56ページ、大洋図書、2021年

『メロンの味』 あらすじ(ストーリー)

あらすじではありますが、最初の引用文よりも詳しい内容が書かれています。
未読の方でネタバレを完全回避したい方はご注意ください!

人の体温が
ないと
寝つけないん
だよね

引用元:絵津鼓『メロンの味』上巻32ページ、大洋図書、2021年

中城が木内と同居することになったのは、
唐突な流れだった。

同棲中だった彼女にフラれて
家をなくした木内
は、
知人を頼るも断られてしまう。
妻や子供のいる世代だからだ。

そこで白羽の矢が立ったのは
一人暮らしをしている中城

木内が店の常連ということもあり、
渋々ながらも受け入れた中城は
自宅へと招く

木内から
「人の体温がないと寝つけない」
「一緒に寝てほしい」
そう何度も頼まれた中城は、
ゲイであることを打ち明けた。

まるで偏見のかけらも見せない木内は
「いいよ!」
「俺でよければなんでも相手になる!」
と言い切り、布団へともぐり込んだ。

共同生活が続いていくうち、
中城と木内は互いの過去を知ってゆく

ゲイであることが両親に知られてから
気まずくなってしまったこと、
恋人とセックスレスになり連絡が取れないこと。

十代のころに売れっ子バンドになるも
何も作れなくなり不眠症に陥ったこと、
病識へのすれ違いから彼女と別れたこと……。

ぽつぽつと語る相手の言葉は聞くが、
必要以上の干渉はしない。

居心地のいい状況に
馴れ合うふたりだが、
中城が引っ越すことになり──

続きは本編で!

本編はこちら!

『メロンの味』 単行本情報(描き下ろし/収録/修正など)

収録内容

上巻
 1〜4話

下巻
 5〜7話
 描き下ろし

描き下ろし

プロポーズ

『メロンの味』 単行本の特典

2021年10月発売作品のため、現在は入手困難な場合があります。

とらのあな上巻購入特典→描き下ろしイラストペーパーC
下巻購入特典→描き下ろしイラストペーパーD
コミコミスタジオ上巻購入特典→描き下ろしイラストペーパーA
下巻購入特典→描き下ろしイラストペーパーB
上・下巻同時購入特典→B5サイズクリアファイル(既存カラーイラスト)
ホーリンラブブックス上・下巻同時購入特典→B5サイズクリアファイル
(片面既存カラー+片面描き下ろしモノクロイラスト)
書店共通上・下巻共通特典→描き下ろしイラストペーパーE

『メロンの味』 作品中に登場したもの(映画など)

2人が観ていた映画

テイラー・シェリダン監督『ウインド・リバー』

『メロンの味』 感想レビュー(ネタバレあり)

具体的に「ここが良かった!」とページ数やセリフなどを挙げています。
未読の方でネタバレを完全回避したい方はご注意ください!

浄水器のような作品。

一見透明なようでいて(上巻)、実は濁った部分があって(上巻終盤〜下巻序盤)、それがじんわりと澄んでいく(下巻)感じ。読後のカタルシスが良い物語でした。

ヒューマンドラマな側面が強いので、簡単に「全部解決サッパリ!」というエンディングではないのですが、余韻が味わい深いラストです。

じんわりと沁みる話が読みたいとき、寄り添ってくれるような漫画に触れたいとき、手に取りたくなる作品の1つになりました。

絵柄の変化はステキな進化

上巻の最初に「絵柄を変えてから初めてのコミックス」とある通り、タッチが少し変わっています。これがまたステキな変化。

ちゃんと前の”味”を残しつつ、洗練されているので「Ver1.0」から「Ver1.8」になった印象。変わったのは分かるけど、魅力は失われていないんです。

絵柄がガラッと変わって「なんか違う」ってなることはありませんでした。前作からのファンもぜひ手に取ってほしいです。

紙の本での購入もオススメ!

電子書籍で買った後、これ紙の本で買っても良かったな〜〜ってなりました。

ネットの通販写真だけだと分かりませんが、紙の質感も活かしたデザインになっています。インクの染み込んだ様子がカバーイラストに合っている。

エロはあるもののズッコンバッコン系ではなくてシットリ系ですし、うっかり他人に見られても「読んでみ」って言えるBL漫画です。こんな理由から、紙の本で買うのもアリだったな〜と思いました。

名前の呼び方が変わるところ好き

木内(攻め)はずっと「ナカジョーくん」と呼んでいるのですが、

「ナカジョー」くんの漢字 初めて知ったよ ずっと響きだけでしか知らなかったから

引用元:絵津鼓『メロンの味』下巻137ページ、大洋図書、2021年

この言葉をキッカケに、吹き出しの中がすべて「中城くん」になります。
細かいけどこういうの好き。

タイトルの意味とは?

タイトル「メロンの味」「あのころの2人の味」といったニュアンスを含んでいるように思いました。

今ふと思ったんだけど このメロン味って偽物だよね 全然メロンではないよね でもおいしーよね 偽物だけどこれがメロン味って定着してるよね うらやましい

引用元:絵津鼓『メロンの味』上巻76ページ、大洋図書、2021年

好き合っている同士ではないけど身体の関係を重ねていて(=偽物)、でも居心地がいい(=おいしー)からズルズルと続けている。そして、偽物だと思っていたけど本当になった(=定着してる)のが中城(受け)と木内(攻め)の関係を示唆するように思いました。

また、中城が自宅で使っているボディソープの香りは「Cucumber Melon(キュウリとメロン)」(上巻143ページ)。でも「友達の旅行土産」なので「無くなったら終わり(上巻144ページ)。その後、木内は旅館のボディソープを使った中城の背中を舐めて「家のボディソープとは違う味」(下巻114ページ)と言っています。「メロンの味」は、今使っているボディソープの味。2人が初めて一緒に暮らした日々の味。偽物だったけど本当になった味。そんな風に感じられました。

もちろん、いろんな捉え方があると思います。というよりも、「解」が存在しないからこそ沁みる部分がある作品なので決めつけないでもいいのかなと〜。皆さんの解釈を教えてください!

大樹親子と喫茶店のおばちゃん

メイン2人以外で気になるキャラクターといえばこの2組。二面性のない人間はいないと物語っている存在とも言えます。

木内さんは俺で 俺は木内さんでもある

引用元:絵津鼓『メロンの味』下巻149ページ、大洋図書、2021年

木内(攻め)自身、軟派でヤリチンで明るそうに見えて、実は精神疾患を抱えているというキャラクター。母親は外面は良いけど、少し育児ノイローゼになっている人。おばちゃんは一見コワモテだけど豪快な食欲が面白い人。

まともそうに見える人でも歪んだ側面はあるし、怖そうな人でも打ち解ける隙はある。

そんな人間臭さと、ときに融合したり(中城と木内)離れたり(中城夫妻・中城親子)しながら人生は続いていく。じんわりと余韻を残すエンディング、どうぞご覧ください。

本編はこちら!