ポップなオメガバ【BLマンガ感想】腰乃『滅法矢鱈と弱気にキス』レビュー

作品名
 滅法矢鱈と弱気にキス
作者名
 腰乃
レーベル
 マーブルコミックス
あらすじ
第二次性別検査で初めてαの結果が出た男子高生・横須賀。両親ともβゆえに驚きと動揺を胸に、義務付けられた国の少子化対策説明会へ出向くと、でかでかと「フィーリングカップルGOGO!!お見合い会場」という文字が踊る看板がお出迎え…! 一抹の不安を抱きつつ歩を進めると、そこには可憐で可愛らしい女子Ωちゃんが大勢! 相性の良い娘が見つかったら彼女ができる!?と俄然やる気になって相性診断に臨む横須賀だったが、92%と超レア最高クラスの相性を叩きだしたのは無愛想で目付きの悪い……オトコ?!?!?!?

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傾向チャート

コミカル←|―|●|―|―|―|→シリアス  
物語重視←|―|●|―|―|―|→作画重視
さわやか←|―|●|―|―|―|→えちえち
特殊設定←|●|―|―|―|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|―|―|●|→受の良さ

攻め情報

横須賀 恋治
 #茶髪 #高身長 #細身 #アルファ #制服 #16歳 #高校生 #惣菜屋 #正直 #純情 #チョロい #無自覚

 「つか俺はよぉ 普通に俺のこと好きになってくれる子と つきあいてぇだけなんだよ Ωとかじゃなくてっ」(1巻43ページ)
 「あのよ…っ悪かったよ俺も…勝手にすっ転んだのあんたのせいにして…っ」(1巻98ページ)
 「出産!? 産めんのか!? すげぇなあいつ…!」(1巻103ページ)
 「平気だこんなもん 体痛ぇのなんて治んだからよッ 心は違ぇわ 気分悪ぃんだよ」(1巻136ページ)
 「困って苦しんでる奴がいたら 手、貸してやんのは当たり前だわ」(1巻188ページ)
 「んなに俺の心は狭くねぇしッ 言ってくれりゃなぁッ 服ぐれぇなんぼでもやるわ…ッ」(1巻204ページ)

出典:腰乃『滅法矢鱈と弱気にキス』(東京漫画社、2020年)

受け情報

源 静香
 #黒髪 #高身長 #華奢 #オメガ #看護服 #20代 #研修医 #健気 #男前 #強気 #純情 #舌打ち #献身的

 「お前らαは俺らΩに 逆らう事なんてできねえって事 わからせてやる」(1巻37ページ)
 「こんなに丁寧に説明してるのに なんで理解できねぇんだ 馬鹿ッ」(1巻74ページ)
 「お友達からお願いします!!! 俺とつきあって下さい!!!!」(1巻82ページ)
 「がまんがまん いたいの いたいの とんでけ」(1巻90ページ)
 「ドキッとしたろう? ときめいたか?」(1巻107ページ)
 「やれば出来る子だな 横須賀 がんばれ」(1巻130ページ)
 「恋治さんの えっち 静香って呼んでくれたら 許す」(1巻161ページ)

出典:腰乃『滅法矢鱈と弱気にキス』(東京漫画社、2020年)

攻めと受けの対比

年齢:攻<受
身長:攻>受
体格:攻>受
階級:攻=受
立場:攻=受

受賞歴

「このBLがやばい!2021年度版」 第12位

おすすめポイント

腰乃先生初のオメガバース作品。

作家さんとして新境地ですね!
カバーデザインも今までになかったテイストで素敵。
電子書籍の単話版カバーイラストは
今まで通りの腰乃先生といった感じなのですが、
単行本版は新しい印象です。

オメガバースを活かしたオリジナル設定も面白いです。
『俺は頼り方~』がリアル寄り(悩みや性描写など)だとしたら、
『滅法矢鱈と~』はフィクションの長所を最大限に引き出した作品。

「フィーリングカップルGOGO!!お見合い会場」だったり、
運命の番にだけ発揮できるオメガの特殊能力だったり、
物語を楽しく盛り上げてくれる設定に
腰乃先生のセンスが光る。

何より受け(Ω)の静香が最高に愛らしい。
BLに求めてる「かわいい」ってこういうこと!
見た目はちゃんと男なんです。
これが最高。
目つきも口も悪く、強引で、男気があって、
身長も高いし、陥没乳首。
ルックス面での愛らしさはあまりない。
でも、行動が最上級にかわいいのです。
なんとも健気で献身的で不器用。

怪我の治療中である恋治に対して、
「がんば」「ふぁいと」となるべくかわいいΩっぽく応援したり、
毎晩深夜に様子を見に来ておまじないをかけたり、
くちのことを「おくち」って言ったり、
ド直球に「娶ってください」とお願いしたり、
ゴミで一生懸命巣作りしたり。
いじらしいかわいい。

漫画の技術的なところでいうと、
線のしっかりした絵柄でありながら、
繊細な表情の描き方が非常に上手な作家さんです。
気まずい、後ろめたい、という微妙な感情や、
“嬉しい”の度合いがどの程度のものか、
というのが一目で伝わってきます。

とくに、照れた表情や嬉しそうな表情がなんともかわいい。
38ページの弱気なキス、からの「ふん」だったり、
76ページの「そろー…」「ぎゅっ」のコマだったり、
131ページの「うっせぇよっ」だったり、
157ページの「いきなりで驚いた」だったり、
174ページの「し…静香さん」だったり
(該当ページを開いてお確かめください。萌えます)。

あと、細かい部分なのですが擬音の使い方が良い。
触感や音、匂いの強さなど、
絵だけでは伝わりにくい部分に
輪郭を持たせてくれているので、
具体的な想像がしやすいのです。
そして、かなり擬音を入れているのに、
しつこさを感じない。
人物の絵となじんでいるので、
自然に読めます。

「オメガバースは好きだけど腰乃先生の作品初読みなんだよなぁ…」
という方も、
「腰乃先生は好きだけどオメガバースかぁ…」
という方も、
絶対買って損ない一冊です。