うっとりする童話【BLマンガ感想】小石川あお『食べないの?おおかみさん。』レビュー

世話好きの狼男
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健気な生贄

作品名
食べないの?おおかみさん。
作者名
小石川あお
レーベル
バーズコミックス ルチルコレクション 

生贄として森に捨てられた人間の子ども・太郎。 森の奥に住む狼のウルは、痩せた人間は美味しくないと言い、太郎に美味しいご飯を食べさせ、きれいな洋服を着せ、怪我の一つもしないように、大切に大切に育ててくれた。 大きくなったら大好きなウルに美味しく自分を食べてほしいと願う太郎だけど、いくつもの季節が廻った森のなかで二人は――。 甘く、切ない異種族BLストーリー! 

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作品の雰囲気

コミカル←|―|―|●|―|―|→シリアス
物語重視←|―|―|―|●|―|→人物重視
台詞重視←|―|―|●|―|―|→表情重視
けんぜん←|―|―|●|―|―|→えちえち
さわやか←|―|―|●|―|―|→じめじめ
現実主義←|―|―|―|―|●|→非現実的
特殊設定←|―|―|●|―|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|●|―|―|→受の良さ

攻め情報

ウル
 #黒髪 #長身 #筋肉質 #顔がいい #狼男 #心配性 #世話好き #男前 #家庭的 #ワンコ

「まったく 木いちごにはとげがあるんだから 気をつけないとだめじゃないか せっかく私がおいしくいただこうと思っているのに…」(36ページ)
「これでいいんだ それが太郎のためなんだよ」(60ページ)
「はいはい 太郎がもっと大人になったらね」(116ページ)
「気安く誘われないでくれ きみは私の花嫁なのに」(219ページ)

出典:小石川あお『食べないの?おおかみさん』(幻冬舎、2020年)

受け情報

太郎
 #金髪 #小柄 #華奢 #かわいい #捨て子 #生贄 #健気 #やんちゃ #無自覚 #純粋

「山羊ミルクと蜂蜜の入浴剤 天然塩のスクラブ きゅうりパック アロエローション 蜜蝋クリーム 椿油… よし 下ごしらえ おしまい」(26ページ)
「痛くてもいいよ ちょっとだけならいいよ はい ウルなら たべてもいいよ」(130ページ)
「しょうがない ウルたちにも教えてあげようか」(153ページ)
「大丈夫 何かあったらウルが助けに来てくれる いつもみたいに」(177ページ)

出典:小石川あお『食べないの?おおかみさん』(幻冬舎、2020年)

攻めと受けの比較

年齢:攻>受
身長:攻>受
体格:攻>受
階級:攻≧受
立場:攻=受

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小石川あお
『食べないの?おおかみさん。』

あらすじ

人間の太郎(受)と
狼男のウル(攻)。

太郎が生贄として
ウルの元へと
やって来てから、
しばらくの時が過ぎた。

最初は
「食べるところが少ない」から
育てるのだと言っていた
ウルだが、太郎が大きく成長した
今も面倒を見続けている。

ウルは

どうしてぼくに

やさしくするの?

もちろん

きみを

食べてしまう

ためだよ〜

ガオー

そう言いながらも、
食べる素振りを
見せないどころか
過保護にすら思えるほど
太郎を心配するウル。

木いちごを取りに
朝早く出かけた太郎を
心配して追いかけたり、
犬の愛情表現のように
太郎を舐めまわしたり、
幸せそうな二人は
捕食者と被食者というより
親子のよう。

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小石川あお
『食べないの?おおかみさん。』

しかし太郎は、
ウルが面倒を見るのは
「おいしくするため」
だと考えている。
幼い頃からずっと、
そう言われながら
育てられてきたからだ。

そんなある日、
太郎の身体に
異変が現れる。

声変わりに
膝の成長痛──
太郎は少年から
青年へと
変わりつつあった。

前とは違う自分に
とまどいながら
川のほとりへ行くと、
人魚たちが交わっていた。

艶めかしい情景に
心音を大きくする太郎。
「性」を意識し始め、
ウルに対しても
ぎこちなくなってしまう。

さらに、妖精から
「生贄」とは
食べ物ではなく「花嫁」だと
教えられ、自分がいかに
子供だったのかを
思い知る。

日に日に色気を増す太郎に
気持ちを抑えられなくなった
ウルは、人の姿で
寝ている太郎へ口づける。

雪男…?

あれ

なんだ

ウルか

寝ぼけてるのか…

ウルは狼男であり、
人の姿と狼の姿、
両方を持ち合わせている。
しかし、太郎には狼の姿しか
見せたことがなかった。

人の姿を見せるということは
契りを交わすのと
同義だったからだ。

吹雪の日。
ドアを叩く音が
聞こえた太郎が
ウルと一緒に開けると、
盲目の商人が立っていた。

彼はウルを
知っているようだった。

何か「大人」の話を
しているようで、
太郎は混ぜてもらえない。

仕方なく外で薪を
集めて帰ってくると、
ウルは「春になったら
商人に太郎を預けたい」と
話していて──!?

続きは本編で

本編はこちら

小石川あお
『食べないの?おおかみさん。』

感想レビュー

期待の上回り度が高い作品。
「たぶんこんな感じだろうな」
と思って開くと、
「全然違った、けど、それが最高……!」
になるタイプの漫画です。

表紙だと少女漫画っぽい
色の塗り方と雰囲気なんですが、
モノクロではわりと青年誌風な
描き方をされていて、
(「モーニング・ツー」とか
 「IKKI」とかに
 ありそうな雰囲気)
個人的にこういう
タッチが好きなので
テンションが上がりました。

今までの画風とは
かなり変わっていて、
童話っぽくするために
あえてフワッとした感じに
されたのかな
と思います。
それが最高に良い。
物語に合っています。

他の作品ではもう少し
耽美っぽい感じで、
それも艶っぽくて素敵。
その面影が残っているのが
攻めの「ウル」の人間姿。
色気のある男なんすわ……。
試し読みの一番最後に
一瞬だけ映っているので、
「獣人ものかー、うーん」
と迷っている方は
見てみてください。
恋愛的な絡みのあるシーンは
すべて人型で行われます。

狼姿でペロペロするときは
文字通り犬のペロペロ。
犬が懐いてくるときの
姿そのもので可愛い。
ウルが「えへへ」となっている
ときのデフォルメ顔は
こっちも「うふふ」となる
幸せそうな顔です。

太郎の生態に
謎が残るといいますか、
色々な想像ができるのも
面白いですね。
(「人間」でありながら、
 第二次性徴期を迎えるまで
 百年が掛かったのは
 土地によるものなのか、
 ウルの恩恵によるものなのか、
 元々この世界の「人間」は
 エルフ並に長寿なのか…)

あと私は普段
育ての親×育てられた子の
カップルが苦手なのですが
(セックスするために
 育てたのかと思って
 しまい引くというか…
 光源氏と紫の上の
 関係とか抵抗あって)

この二人に関しては
気にならなかったですね。
純愛だなと感じました。

そして小太と佐助の
たぬきコンビの
可愛いモフたちに
始まり、
ユニコーン、
マーメイド、
ウンディーネ、
春の精霊、雪男など
色々な架空生物も
作品の見どころ。

ファンタジーもの、
ふんわりほのぼのとした
雰囲気が好きな方に
オススメ
です!

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小石川あお
『食べないの?おおかみさん。』