純愛ダークラブ【BL漫画感想】三ツ矢凡人『キミがウソをついた』レビュー

タイトルキミがウソをついた
作者三ツ矢凡人
巻数1巻
連載状況完結済(雑誌:花丸漫画)
レーベル花丸コミックス
出版社白泉社
紙の本発売日2018/5/25
電子書籍発売日2018/5/25〜

「ほら、はやく覚悟を決めて―――」

閉め切られた部屋で外にも出ず、たった一人漫画を描き続けるダメダメな漫画家・絃。すべては幼馴染であり、心も体も許すほど全幅の信頼を寄せている担当編集でもある悠真のためだった。しかし一方悠真には、絃には言えない秘密があった。すべては絃を手元に置いておくため。悠真のとった行動は―――君さえいれば僕の世界は完結する……相手の何もかもを欲しがる、純愛ダークラブ。

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登場人物紹介

攻めキャラクター:大地悠真(おおち・ゆうま)

マンガ編集者。風見と小学校からの幼馴染。

#黒髪 #長身 #細身 #めがね #編集者 #エリート #真面目 #神経質 #潔癖 #執着 #ヤンデレ

俺のことすきか? 俺以外いらない?

引用元:三ツ矢凡人『キミがウソをついた』25ページ、白泉社、2018年

もし俺が…絃にウソをついてたらどうする

引用元:三ツ矢凡人『キミがウソをついた』151ページ、白泉社、2018年

受けキャラクター:風見絃(かざみ・けん)

マンガ家。大地と小学校からの幼なじみ。

#茶髪 #中背 #華奢 #漫画家 #ワンコ #健気 #ヤンデレ #執着 #天然 #献身的 #淫乱

え──っ えっちは えっちしようよ〜〜〜〜 …ゆーまくんだってしたいくせに

引用元:三ツ矢凡人『キミがウソをついた』46-47ページ、白泉社、2018年

俺が約束破ったんだもん ゆーまくんは悪くないよ 俺はゆーまくんのものだよ

引用元:三ツ矢凡人『キミがウソをついた』92-93ページ、白泉社、2018年

あらすじ

条件がある
「嘘をつかない事」
「俺以外との接触を
 全て断つ事」

引用元:三ツ矢凡人『キミがウソをついた』89ページ、白泉社、2018年

漫画家の風見は、
自宅に引きこもって
作品を執筆している。

窓もブラインドも全て閉じ、
照明だけで漫画を描く、
文字通りの缶詰状態。

ここは
編集者であり幼馴染の大地
用意してくれた部屋だ。

定期的にやってきては、
食糧や生活品を差し入れて
原稿を受け取ってゆく。

恋人でもあるふたりは、
自宅でキスやセックスをして
互いに満たされている。

しかし、風見の漫画『ドロップマン』は
いつもアンケート最下位

大地が面白いと言ってくれるならと
描き続ける風見だが、
実はアニメ化もしている
超ヒット作
だった。

その事実を隠しているのは、
“外”の世界に興味を持ったり
自分以外の人間と関わってほしくない
という独占欲からだった。

ある日、大地の同僚・本田
出世を狙って風見の部屋を訪れる。

大地がウソをついて監禁していると
気づいた本田は風見を逃がそうとするが、
拒絶されドアを閉められてしまう。

それどころか、事実を黙っていなければ
本田を理由にして連載を辞めるとまで
脅してきたのだ。

やがて監禁 “して” いるのではなく、
“させて” いた
ことが明らかになり──

続きは単行本へ!

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三ツ矢凡人
『キミがウソをついた』

作品の雰囲気

コミカル←|―|―|―|●|―|→シリアス
さわやか←|―|―|―|●|―|→じめじめ
物語重視←|―|―|―|●|―|→人物重視
台詞重視←|―|―|●|―|―|→表情重視
けんぜん←|―|―|●|―|―|→えちえち
現実主義←|―|―|●|―|―|→非現実的
特殊設定←|―|●|―|―|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|●|―|―|→受の良さ

一言コメント

本編は終始シリアス/じめじめなんですが、単行本の描き下ろしや電子書籍版の限定4コマは明るく楽しいお話。デザートが用意されているような1冊でした。

怖いものチェック

身体暴力……………………………あり
精神暴力……………………………なり
自傷行為……………………………なし
流血表現……………………………なし
内臓描写……………………………なし
近親相姦……………………………なし
モブ強姦……………………………なし
主役の死……………………………なし
リバ表現……………………………なし

一言コメント

「外部との関係を一切遮断する監禁」は外から見ると精神暴力だと思うのですが、当の本人に被害意識がないので、「なし」寄りの「あり」として「なり」にしています。身体虐待は首絞め。

感想レビュー

監禁と共依存な病み(闇)BL! あらすじにある「純愛ダークラブ」に偽りナシな作品です。

28-29ページ(電子版30-31ページ)の見開きから先が気になる作品。電子書籍サイトの試し読みだと、17ページで終わってしまっているんですよね。微妙だなって思った方は、たまに1話が無料になっていたりするので第1話を見てから決めてください!

1〜3話前半は「大地(攻め)かなり病んでんな…」とゾワゾワし、健気ワンコな風見に同情さえ覚えるんですが、3話後半〜最終話にかけて「共依存だった(^o^)ヤッター」となります。一方的に監禁しているように見えて、監禁させるようにも仕向けていたと分かるのが良かったですね!

たしかにダークラブではあるんですけど、純愛。なにせショタ期から依存しあっているほど。このショタ期が描かれていることによって、ふたりがどんな環境で育ち、歪んだのかが分かります。厳格すぎる母に育てられ、自らも潔癖で神経質になった大地。奔放な母に育てられ、弟たちよりも大事にされず事故承認欲求が満たされず不安な風見(受け)。

これは共依存になるのも分かるな〜というバックグラウンド説得力がありましたね。風見が監禁されていても、身内から何の心配もされていないことにも納得。こういう監禁もの共依存系って、キャラクターにちゃんと歴史がないと「いや、身内が気づくでしょ」とか「攻めが依存するのは分かるけど受けはよく分からん」とかなりそうなものですが、引っかかりなく読めました。

タイトルの『キミがウソをついた』も秀逸です。作品を読み進めるにつれ、「キミ=大地」だったのが「キミ=風見」になってゆく展開。最初のほう、大地は「嘘(漢字)」と言っていて、風見は「ウソ(カタカナ)」でした。終盤にはふたりとも「ウソ」に変わっています。ミスリードの引き方も上手いなーと感じました(もしかしたら考えすぎで、ただの統一表記ミスかもしれないですが…)。

コミックスの描き下ろしはスピンオフです。あとがきで「一番かわいそう」だったキャラを「幸せに歩き出」させたとあります。なので本編はかなりジメジメしているのですが、スピンオフはわりとポップエロな感じ。

個人的には将来的に「破綻するんじゃないですかね」なメインCPをもっと見たかったですね〜!数年後の破綻匂わせみたいなの好きなんですよ。『お化けより怖いもの』とか『にいちゃん』みたいな後日譚、このふたりで読みたかったな〜。

そう思えるくらい魅力的なカップル。共依存の美しさと恐ろしさが現れています。絵柄が可愛い少女漫画寄りなので、重たくなりすぎていないのも良かったです。耽美系・青年誌系の絵柄だったらかなり重苦しくなっていたんじゃないでしょうか。

メリバ(ふたりにとっては幸せだけど、外から見ると不健康なエンディング)好きな人、
健気に見えて実は策士な受けにときめく人、
独占欲と執着が強くて潔癖な黒髪攻めにキュンとくる人にオススメ。

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三ツ矢凡人
『キミがウソをついた』