ひみつの友達と再会【BLマンガ感想】幸田みう『十年後にあがった、あの日の雨。』レビュー

クラスの中心イケメン
×
健気な地味めがね

作品名
十年後にあがった、あの日の雨。 

作者名
幸田 みう

レーベル
H&C Comics ihr HertZシリーズ 

高校時代、クラスの中心にいるマサと、それを端から眺めているのが好きだった鳴海。学校では全く接点のないふたりだが、外では偶然に会って話す仲だった。正反対なはずなのに、ふたりでいる時間は居心地がよかった。だけど、あの日、初めて行ったマサの家。
────ふたりはセックスをした。
それ以来、ふたりで過ごす時間はなくなってしまった。あの日、あの時、それぞれが見ていた景色。十年後に繋がる想い、同級生再会ラブストーリー。

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作品の雰囲気

コミカル←|―|―|―|●|―|→シリアス
物語重視←|―|●|―|―|―|→人物重視
台詞重視←|―|―|●|―|―|→表情重視
けんぜん←|―|―|●|―|―|→えちえち
さわやか←|―|―|●|―|―|→じめじめ
現実主義←|―|●|―|―|―|→非現実的
特殊設定←|―|―|―|●|―|→王道設定
攻の良さ←|―|―|●|―|―|→受の良さ

攻めキャラ

桐生(マサ)

#茶髪 #長身 #細身 #顔がいい #会社員 #母子家庭 #毒母 #一人っ子 #執着 #臆病 #派手 #モテる #諦観 #プライド

「お前いっつも俺のこと見てんじゃん 好きなんじゃねーの?」(28ページ)
「…俺のかーちゃん 荒れてて…昨日はグラス投げつけられたし 今日もすげー酒飲んでるみたいだったから 家 居たくなくて…」(60ページ)
「くそっ 可愛いな…こいつ…セックスしたらどんな顔すんだろ…」(70ページ)
「そうやって 自分のものにしようとするから不幸になるんだ…」(120ページ)
「俺だけずっとお前のこと考えてて 鳴海は 俺のことなんて見たくもないかも とか考えたら 正直 今でも まだ怖い」(142ページ)

出典:幸田みう『十年後にあがった、あの日の雨。』(大洋図書、2020年)

受けキャラ

鳴海

#黒髪 #小柄 #細身 #めがね #かわいい #会社員 #地味 #天然 #嘘が下手 #謎センス #健気 #一途 #内気

「あーもーこのTシャツ気に入ってたのに…」(56ページ)
「あっ麦がっ途中で疲れちゃったから休けいしてて ぐっ 偶然だね」(78ページ)
「え? 別に…み…見てない…やぁー 特には…」(90ページ)
「僕の好きの方が マサより絶対やばいレベルだから安心してよ」(146ページ)
「あっぁ── ほらー!油断するとすぐモテる…!! マサ!」(174ページ)

出典:幸田みう『十年後にあがった、あの日の雨。』(大洋図書、2020年)

攻めと受けの比較

年齢:攻=受
身長:攻>受
体格:攻>受
階級:攻>受
立場:攻=受

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幸田みう
『十年後にあがった、あの日の雨。』

あらすじ

高校時代、
さほど仲良くもなかった
クラスメイトの結婚式に
招待された鳴海(受)。

所在なく隅で
ひっそりと佇んでいると、
同級生のマサ(攻)から
声をかけられた。

鳴海は全然

変わんないね

マサは…

ちょっと老けたよね

ずっと嫌われていると
思っていたマサから
話しかけられ、
少し驚きながらも
嬉しくなる鳴海。

鳴海は高校時代からずっと、
マサに恋をしていた。
疎遠になった今でも、
「彼女がいない」という
言葉一つで舞い上がる。

一言二言交わしたところで、
人気者のマサは
他の同級生に呼ばれ、
去ってゆく。

鳴海が会場を出ると、
雨が降っていた。
ふと右側を見たら、
マサが待っている。
駅まで傘に入れて
ほしい。
そう言われた鳴海は、
二つ返事で快諾し、
家が遠いなら
泊まるのはどうかと提案。
マサは満面の笑みを見せた。

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幸田みう
『十年後にあがった、あの日の雨。』

鳴海がマサに嫌われていると
思ったのには理由がある。

高校時代、
マサは一度だけ鳴海を抱いた。

その日以降、マサは鳴海に
話しかけることもなく、
別の女性と交際を始め、
卒業し、連絡も途絶えた。

あのときのセックスで
見限られたのだろうと
諦めていたのだ。

好きなマサに抱かれて
嬉しかった鳴海は、
その思い出だけを胸に
過ごしていた。

一方、マサもまた、
鳴海に恋をしていた。
好きになりすぎることが
怖くなり、自ら遠ざけるような
素振りをしていたのだ。

しかし日に日に
鳴海への思いは募り、
結婚する友人へ、
鳴海を呼んでほしいと
頼んでいた。

そして今日という日を
迎え、二人は互いに
想いを伝え合う。

──3ヶ月後。
二人は居酒屋で
デートをしていた。

マサが僕の

かっ彼氏…とか

やっぱ

信じられない…

あの頃の僕に

教えてあげたいよ

もういい加減

慣れろー

高校時代のように、
オドオドしながらも
屈託のない笑みを見せる
鳴海を見て、マサは
過去を思い出していた。

マサは気づいていた。
鳴海と同じクラスになってから、
彼がずっと自分を見ていることに。

クラスメイトでさえ
勘づいていたが、
マサから話しかけることも
鳴海から話しかけることも
なかった。

ある夜、
マサがコンビニへ行くと、
犬に引きずられて
転んでいる鳴海を発見。

ベンチに座らせ、
隣にかけると、
犬の名前や
散歩コースなど
他愛のない会話を
するうちに、
マサの気がほぐれてゆく。
そして、今まで他人に
教えたことのない、
家庭の事情を
打ち明ける。

ほら

なでると落ちつくよ

なんだそれ

おかしな奴

優しい笑顔を見せる
鳴海と犬に、
心を開いていくマサだったが……。

続きは本編で

本編はこちら

幸田みう
『十年後にあがった、あの日の雨。』

感想レビュー

しっとり、じんわり、
わだかまりが溶けてゆく、
素敵な一冊。

もともと1話完結の
「十年後にあがった、あの日の雨。」
のあとに
「十年前に聞いた、最初の雨音。」
1〜4話が続いているかたちの一冊。
「十年後」のほうでは
語られなかった、
高校時代やマサのバックグラウンドが
「十年前」で明かされていきます。

読み切り版では鳴海の視点、
連載版ではマサの視点。
両者からの
目線で語られるので、
点と点が線に
なってゆくような
イメージがあって、
読んでいて腑に落ちます。

地味な鳴海が
クラスの中心的存在である
マサに惚れるのは分かるけど、
マサは鳴海のどこが
好きになったのか、
そして何故それを言えなかったのか、
というアンサー的な続編。

そんな二人を繋いだのは、
柴犬の麦くん。
二人に寄り添ってくれる
かわいくてお利口な子。
雨がっぱ姿でニコニコしているのも
とっても可愛い。
老犬になっても可愛い。

麦くんのおかげで
癒し成分もたっぷり
なんですが、
セックスシーンの
鳴海の表情や
マサの心情、
鳴海へかける言葉が
また色っぽくて良い。

派手さよりも
しっとりした雰囲気、
じんわり響く物語が
好きな方にオススメ!

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